【−4】忘れ物

廃墟スポットで備品を失敬して霊に取り立てをくらうという定番ネタとは真逆とも言える内容で、なかなか珍しい話であるだろう。
親切というか、お節介というか、とりあえず薄気味悪い話であることは言うまでもない。
ところが、文章が最低レベルである。
常々“実話怪談は記録の文学である”ということを主張しており、リアリティーの追求を第一義として文章を書くことを推奨している。
とは言うものの、体験者から聞いた話だからといって、ここまで完璧に伝聞体で書かれてしまうと、さすがに辟易という言葉だけでは済まされないだろう。
文章自体は破綻していないが、読みづらさの点では最早投げ出したいという気分にさせられるほど酷いものになっている。
そして全てを伝聞体で綴ることは、作品における書き手の存在意義を放棄するに等しい行為であるとも言えるだろう。
書き手は、体験者から取材した内容を文章によって“再構築”することが役目であって、内容紹介をするだけの存在ではないのである。
この作品にあるような書き方では、体験者の喋った言葉をテープから起こしてそのまま書いたのとほとんど代わり映えしない。
書き手としての役割を自覚しない書き方ということで、大きくマイナス評価とさせていただいた。