【+3】ネバーランドの入り口は

『白雪姫』に登場する小人然したあやかしが報告されたのが1990年代前半頃、そして最近は“小さなおっさん”タイプのものの目撃が激増しているジャンルの怪異であるが、ついに本物の妖精と思しき存在の報告である。
ティンカー・ベルを彷彿とさせる容姿も希少性が高いが、何と言っても、この小人系怪談はじまって以来と言える“あやかしとの会話(しかも日本語で!)”が成立したエピソードなのである。
この希少性は絶対に見逃せないし、声を大にしてこの実話のレベルの高さを称賛したいと思う。
(この種の小人系あやかしの特徴の一つに、ほとんど声を発さないことがあるのだが、その“常識”をうち破っているところが凄いわけである)
そしてこの目撃談の素晴らしいのは、希少性だけではなく、それを表現する文章が非常にテンポ良く巧みであるところである。
体験者の狼狽ぶりが怪異の本質によくマッチしており、自然な笑いを取っている。
またその狼狽ぶりの心理的な流れが不自然ではなく、ある意味整合性を持って語られていると判断できる。
まさに臨場感あふれる展開となっているのである。
作品集の中に入れてもその異彩ぶりが目立つほどの内容であり、十分な佳作であると言えるだろう。