【−3】風通し

怪異を表現する手法としては、大まかに分けると2つのものがあると思う。
一つは克明な説明と描写で余すところなく徹底的に怪異を表現する方法、そしてもう一つは怪異の決定的瞬間だけを切り取って強烈なインパクトを醸し出す方法である。
この作品における怪異は不条理なシチュエーションを提示することで成立する内容であるために、事細かな説明よりも怪異そのものの状況だけをスパッと描いた方が効果的であるだろう。
ところが、怪異が起こった周辺状況までも丁寧に書きすぎたために却って現象そのものが怪異であるかどうかという根本的な部分で疑問を投げかけられるようなお粗末なことになってしまっている。
特に部屋を出て戻ってくるまで15分掛かったという記述は、言わずもがなのことを書いてしまっており、怪異としての成立そのものをぶち壊しかけている。
また現象についての細かな数値や、現場検証よろしく細かな状況を書きすぎているために、あやしさが完全に消し飛んでしまって、誰かの悪戯、即ち超常現象とは思えない印象を植えつけてしまったと言えるだろう。
“あったること”として現象だけを書いていればまだ救いようがあったと思うのであるが、ここまで物理現象の次元で検証されてしまうと白けてしまうしかほかない。
検証すればするほどあり得ない事態が判明するのであればいいのだが、この作品のような現象は逆に謎めいた書き方にしないと怪異のようには見えてこないのである。
悪い意味でバカ正直過ぎるのである。
良い意味でのぼやかし方をしないと、怪異と思えるものまでただの物理現象にしか見えなくなるわけである。
書き手自身が怪異の種を別のものに換えてしまったという印象が強いため、大きくマイナス評価とさせていただく。