【＋３】白

典型的な“旧家の因襲が破られて怪異が起こる”パターンの作品であるが、このシチュエーションの話だけはお決まりの展開になったとしても、それを上回るカタストロフィーの激しさに圧倒される。
ただこの作品について言えば、話し手自身が当該の人間ではなく伝聞となってしまっているために、怪異の全容がつまびらかになっていない分だけ、少々不満が残るところとなっている。
カタストロフィーに当たる怪異はしっかりあるのだが、被害にあった少女のその後から、一族の没落までの後日談と言える部分がないために、どのような災厄が降りかかったのか微妙に興味をそそる内容がないのが非常に惜しい。
もしかすると、作品に書かれた不幸以上の出来事があったのではないか、あるいはこの儀式の本体となったものの存在についての情報が得られたのではないかという思いは募るばかりである。
また最後の部分でいきなり視点が変わった部分であるが、やはり唐突すぎて何が起こったのか読み返さなければ解らなかった。
そして話者自身が感じている必然性というものが何となく曖昧然としているために、この部分はカットしてしまった方が怪異が際立ったように思う（話者自身が因襲にまつわる何らかの条件を満たしうるだけの素質を持っていることが明確であれば、書いても良かったのだが）。
全体的によく整った調子でグイグイ引っ張ることができる文章であり、読みやすい内容であったと思う。
残念ながら怪異の全容が見えなかった分だけ評価は低いが、それでもやはり強烈なインパクトのある内容であると言える。