【−1】午後四時の一致

事故や病気で死ぬ者がその最後に別れを伝えにくるという典型的な話であり、いくら書き方を変えてもどうしても先の展開が読めてしまっている。
この作品の場合、午後四時という時間に着目して怪異がほぼ同時刻に現れていることを強調することで、変化球を投じているのであるが、それが却って怪異そのものの説明描写を薄っぺらいものにしてしまっている感が強い。
バイクに乗った友人の格好であるとか、リングの見つかった状況であるとか、写真が出てきた状況やそこに写っている様子であるとか、もっと事細かに読者に提示してリアリティーを植えつけるような内容があるにもかかわらず、“その時間が午後四時”ということをテンポよく知らしめるために詳細を端折ってしまっている。
そのために、それぞれの体験者が友人の死という事実を知った瞬間に感じるであろう悲しみの深みが、全然言葉から受け取ることができないのである。
最後の部分で体験者の悲しみをダイレクトに書く以上に、その体験した瞬間の情景がしっかりと焼き付けるように記憶されていることを示した方が、余程読者に対して強い感情の発露が響いてくるように思うのである。
そしてもう一点、事故の際に知らずに彼女が救護したくだりであるが、これはそれまでの不思議な心霊的体験とは異質の内容であり、同列に書くことは厳しいと言えるだろう(劇的であることは言うまでもないが、だからといってこれを同じ次元に並べることは書き手の怪異に対する感覚に問題があるだろう)。
親友の死ということを鑑みると、やはり何か感情的に足りないものが大きすぎるという印象である。
もっとウエットに書くことも方法ではなかっただろうか。