【−2】にゃあ

内容をかいつまんでしまえば、轢かれた猫の死骸のそばに猫の霊体を目撃したというだけのものである。
そのエピソードを軸に、猫の死体はなぜなかなか見当たらないのかなどの余談を付け加えたり、体験者の心情の細やかな変化を書き綴ったりしているのだが、如何せん、話が長くなっただけで怪異そのものの底上げがなされた感はなかった。
むしろ付け加えられた内容が、余計に怪異の貧弱さを露呈してしまっているように見える。
特に前半の話は怪異と直接関係ない内容であり、単なる“思わせぶり”だけのために書かれたとしか言いようがない。
死んだ猫を見かけないと書いているものの、路上で車に撥ねられて死んでいる猫はよく見かけるわけなので、結局恣意的な印象を書いて、本題に繋げようというあざとさだけが目立ってしまった。
詰まるところ、猫好きのための不思議譚というレベルで終わってしまっており、体験者の心情については汲むべきところはあるものの、万人受けするウエットな感情にまで達していないと思う。
ただし、いわゆる“お涙頂戴”のいい話まで持っていっていないので、そのあたりはまだましという感じである。
いずれにせよ弱い怪異であり、それを丁寧に飾り付けても怪異そのものの弱さをカバーすることはほとんど不可能ということである(最後の2行については、カバーどころか怪異の弱さをさらに強調しているようなものであり、この部分だけで減点とさせていただいた)。