【+3】出席番号十一番

日常の間隙を縫って非日常である怪異が入り込んでくるとするならば、この作品における怪異はまさにその典型であると言えるだろう。
どこからが日常の世界で、どこからが非日常の異界なのかが全くわからないまま事態が展開する流れは、非常に読み応えのある作品に仕上がっている。
また体験者である子供達の心理描写をはじめとする言動が冒険小説の風を呈しており、目まぐるしく展開する状況にハラハラしながら没入することが出来た。
そして怪異である家の中の状況(これは後になって初めて怪異であったことに気付くのであるが)も過不足なく丁寧に描写されており、さらに怪異であると気付いた段階でのどんでん返しも上手く決まっている。
どんでん返しの部分は非常にベタな展開なのであるが、自然な流れが途切れずに続いているために、不自然さを感じることなく読めた点は好印象である。
書き方の点では、お手本となるレベルではないかと思う。
ただ悪い意味での“冒険小説”風の部分もあり、生徒の謎を最初から先生に聞かなかった点であるとか、先生の方から謎の生徒の正体を明かさずにいる点などは、いささか御都合主義的とも取れるのであるが、許容範囲であるということで不問とした。
全体的には異界譚の面白味を存分に堪能することが出来る展開であり、なかなかの佳作であると思う。