2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【+4】見えない

一人称の視点から書かれる“実話怪談”は、概して不評である。 主観が入りすぎるために取り留めがなく、下手をすると「おまえ大丈夫か?」とか言われる始末で、とにかく悪例のお手本のような扱いになる。 ところが、この作品はこの悪評の常識を逆手にとって活…

【0】抱きつき

コンパクトにまとめているのはいいのだが、まとめすぎて肝の部分があっさりとし過ぎて、盛り上がりに欠けたように感じる。 体験者の最後のリアクション2連発が紋切り型に終わってしまい、畳みかけるようなインパクトが残らなかったのが一番まずいポイントだ…

【+3】早く出てって

圧倒的な筆力で怪異の肝に向かって求心的に進んでいく勢いを感じた。 特に後半の二人のやりとりの部分は長さを感じさせず、文章そのものに臨場感のある緊迫があったと思う。 声の怪異自体はさほどのものでもないのだが、それに付随する怪異とのギャップが凄…

【+1】マイペース

体験者のキャラクターを前面に押し出して怪異を語ろうという形式である。 成功している部分もあれば、そうでない部分もあるというところだろう。 普通であればもっと派手なリアクションが出そうな怪異にもかかわらず、あまりに落ち着き払った行動に出ている…

【+2】念押し

この作品の問題点は一点に集中している。 体験者がカギ括弧付きで語る部分である。 上の段落で怪異の描写を地の文で書いたので、多分作者は変化を付けるために会話文にしたのだと思う。 だが、かなり不条理な内容であるために、説明描写に徹した方が読みやす…

【−4】絵の下の意図

タイトルでここまでネタバレしてしまうのは、かなり珍しい。 しかもネタ以外に付随する怪異がないから、まさにど真ん中の直球勝負である(勿論、読者の殆どが見逃さず打ち返してしまうことになるのだが)。 苦言を言うならば、作者として怪異をどのように見…

【−1】はにわ

最初の段階で情報が不足していたために、読者が困惑するような状況になってしまった。 埴輪が心霊スポットのランドマークであることが最初に提示されていない(最後のところでようやく来歴が語られる訳だが)ために、怪異と埴輪の繋がりが全く理解できなかっ…

【+2】ここにいます

最後の場面で一気に感情を爆発させるためのお膳立てが、出来過ぎと言われてもおかしくないほど揃いまくっている。 作者の意図としては、怪異そのものよりも体験者と猫の交流の方が主眼となっているようだ。 特にそれを感じさせるのが、飼い主の死後におかれ…

【+5】逢魔

非常に打点の高い作品という印象である。 まず怪異の希少性が高い。 【通り魔】という怪現象が江戸時代から語られているが、まさにそれを彷彿とさせる内容である。 被害者は3人なのだが、彼らには“その道を通過した”以外に共通点はない。 その無差別な攻撃…

【−3】気付いて

体験者の主観を中心に書かれた作品。 主観で怪異を見ることには反対しないが、主観だから客観性に欠ける書き方をして良いということはない。 この作品を悪評価とみなした一番の部分は、怪異と気付いたところの体験者の表記があまりにも抽象的すぎる点である…

【+1】左手

怪異のディテールはなかなか良いものがあった。 そしてその左手だけが大人並の大きさの赤ん坊の霊という部分を肝として最後に語らせた点も、作者がよくツボを押さえていると思った。 とにかく怪異については描写も含めて非常に理想的な書き方をしている。 と…

【0】すいませ〜ん

『学校の怪談 職員編』というテイストの作品だろう。 書き方そのものは別に子供向けではないのだが、【すいませんオバケ】などという妙なネーミングのおかげで恐怖感があまり感じられないためであろう。 それと声の正体が怪異であることがわかるくだりの部分…

【−3】拾い貧乏

体験者の最後の説明部分で全てがぶち壊しになってしまった。 よどみなく怪異が書かれかなりヤバい話だと思っていたところに、いきなり都市伝説を持ってこられたのだから、恐怖感は完全に失せてしまい、気まずい違和感だけが残った。 しかも体験者の怪異とそ…

【0】あの映画

前大会でも書いたのだが、既存の作品のイメージで勝負することは、文章を創出する者としてはいかがなものかという意見である。 この作品も、タイトルの段階で“ゾンビ”という単語を思い浮かべた。 そして実際それのイメージだけで話が膨らんでいったと感じた…

【+1】廃病院でのロケ

淡々とした書きぶりや、精確な説明描写に心掛けている点から、かなり濃密な“実録怪談”という印象を受ける。 言うならば、怪現象のレポートである。 特殊な職業の特殊な場所での怪異なので、実録風の描き方はなかなかしっくりと来るものがある。 ただしこの種…

【+4】様子見

正直、ネタそのものには新鮮味を感じなかったし、オチについてもそれなりに先が読めてしまった感がある。 しかし“怪談話”としての完成度は非常に高いものがある。 最後のどんでん返しが判っているにもかかわらず、あやかしのセリフに思わずギクリとさせられ…

【0】目の前に……

出てきたものが珍しいだけで、怪異の本質自体は凡庸である。 しかも書かれた状況だけでは、もしかすると体験者の幻覚ではないかと思われても致し方ない部分もある。 この作品は、出てきたものの珍しさや関心の高さだけが命綱であって、それ以外は特に見るべ…

【−2】細腕

怪異の肝よりもそれに至るまでの前置きの方が詳しいという、かなり雑な印象を受けた。 女性の霊体が現れてから逃げ切ったところまでの部分が殆ど説明口調。 描写できていないばかりか、ディテールと言うべきものも見あたらない。 しかも一番肝心なところが「…

【−1】ネイルの持ち主

生爪が落ちていたらかなりの怪異であるが、付け爪ではトーンダウンせざるを得ないだろう。 作者もそのへんを考慮して、爪に関する印象、普段から付け爪をしてそれに詳しい人物の紹介など、前半部分でかなり慎重に話を進めているように見える。 しかしこれが…

【+3】指輪

作者の匙加減次第では、相当な傑作になっていたかもしれないと思う。 作者が取材時に体験者から聞いた印象は、少年時代の思い出話だったのだろう。 実際ストーリー中の体験者の行動や話しぶりを読むと、恐怖体験であったが、“セピア色の想い出”という言葉に…

【+3】あっ

コンパクトな文章であるが、情報量はかなり多い。 それらを総合して出てくるのは、“違和感のある日常”である。 日本有数のオフィス街と言っていい兜町の街角で、上司と部下が会話をしている。 しかし、その内容は超常現象。 しかも二人にとってそのやりとり…

【−2】トリビア

この作品の特色は何と言っても、例の番組で使用されているレトリックをそのまま使って、コミカルな雰囲気を作っているところである。 しかしこれが成功しているのかと言えば、むしろなかった方が良かったのではないかと思う。 蘊蓄として語られているはずの…

【−1】あたしの

古着の怪談としては、特段目新しさを感じさせる内容ではない。 怪談話で中古品が出てくれば、何か曰く付きだったために売られた品物だという暗黙の推測が成り立つ。 この作品もその域を出ていないので、希少性の面では評価は低い。 しかも出てくるあやかしが…

【0】じぇんこ

読後の感想として最初に出てきたのが「瓶は誰かが持って帰ってきた」という疑念。 田舎では墓に供えた物を持って帰ってはならない風習があるとのことだが、銭の入った瓶が果たして“供え物”とみなされるのかが問題である。 体験者自身墓に供えたというよりも“…

【−5】向かいの店舗

体験者から直接聞いた話ではなく、あくまで怪異を伝聞形式で書いただけ。 そして本当にそれが噂の域を出ないというレベルの話である。 しかもその話がお決まりのパターンを踏襲した内容であるから、フォローのしようがない。 結局煎じ詰めると、「あの空き店…

【−2】日常

怪異の肝が見えてこない作品である。 女子高生の幽霊目撃が怪異のポイントなのかと思いきや、“見える人”である体験者の呟きで終わってしまっている。 目撃そのものもインパクトに欠けるものであるが、体験者が“見える人”であることを告白しているから、さら…

【−1】米袋の中身

“得体のしれないもの”をどこまで描写するかが、この作品の評価のポイントである。 この作品は、結局、描写が足らないために評価を落とさざるを得ないと考えた。 漠然とした恐怖や不安を醸し出すために、敢えてそのものが何であるかをぼやかして書くという手…

【+1】超能力者

結論から言うと、この作品の本質は“怪談”ではない。 超能力者という怪異的存在はいるのだが、それが怪として機能していない。 むしろ“超能力者”の胡散臭さの方が強調され(これは体験者が賞賛している場面でも有効である)、どういうオチで締めくくるのかと…

【+4】赤い手

怪異の肝に当たる部分を最後まで隠し通した結果、怪異の内容以上に驚かされた。 読者の意表を衝けるかどうかは、怪異の内容だけではなく、作者の構成力次第でもあるということを示した好編であるだろう。 これがもし最初の方で体験者自身の問題であることを…

【−1】夜、歩く

知人の死が分かるというより、死者が別れの挨拶に来るというパターンの怪異であるだろう。 ただし、特に劇的でもなく、珍しいとも言えないレベルである。 祖母が亡くなっていれば別であるが、この文章から読みとれる範囲の情報で言えば、やはり取材不足の感…