2007-02-22から1日間の記事一覧

【+2】枝の上

父親の戒め、枝の上の小人、自殺したカップル、この3つの話の絡み具合が凄く微妙である。 不条理ではないが、因果関係がありそうかと言えば断定できるほどの証拠もない。 謎が多いとしか言いようがない。 だから“実話怪談”として書くと、多分この作品のよう…

【−2】誰の?

作者が想定した怪異の肝と、実際の怪異の内容にずれがあるように思う。 タイトルからして、髪の毛が窓の外を横切った不思議よりも、カツラという概念にこだわりすぎているように見える。 そのせいか、髪の毛に関するディテールが絶対的に不足している。 例え…

【+5】蔵の中

“実話怪談”云々を超越して、久々に本物の【王道怪談】を読ませていただいた。 怪異そのものを克明に描写することで読者に圧倒的な恐怖を味あわせるものが昨今の怪談話の主流であるが、戦前の怪談(特に文芸怪談)では、怪異の周辺を際立たせることで“障子に…

【+2】直立

海のレジャーをする人が体験する怪異の中でもかなりのものだと思うのだが、どぎつい恐怖感というものが伴っていない。 その原因は、作者による体験者のキャラクター作りにあるように感じる。 関西弁でまくし立て、豪快にビールを飲み干すオッサンという、か…

【+1】不眠症

妹の不眠の原因が、死んだばあちゃんの不眠の訴えだったという、なかなか結構なオチのある怪談落語である。 文章自体もかなりきれいに刈り込んであって、すっきりとした印象を受ける。 ただ、ちょっとあっさりと進めすぎているような感じもあるので、体験者…

【+4】見えない

一人称の視点から書かれる“実話怪談”は、概して不評である。 主観が入りすぎるために取り留めがなく、下手をすると「おまえ大丈夫か?」とか言われる始末で、とにかく悪例のお手本のような扱いになる。 ところが、この作品はこの悪評の常識を逆手にとって活…

【0】抱きつき

コンパクトにまとめているのはいいのだが、まとめすぎて肝の部分があっさりとし過ぎて、盛り上がりに欠けたように感じる。 体験者の最後のリアクション2連発が紋切り型に終わってしまい、畳みかけるようなインパクトが残らなかったのが一番まずいポイントだ…