2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【+1】寿荘

“あったること”を主観を極力交えることなく記述しようと試みる場合、その選択肢に入ってくるのが“箇条書き”スタイルである。 ある意味、箇条書きは究極の客観的文章スタイルという印象があり、怪異現象だけを抜き書きする目的であれば有効であると個人的には…

【+1】聞こゆ

不条理であるが故に“投げっぱなし”にならざるを得なかったというべき作品だろう。 “カメラ目線!”は不条理怪談のセリフの中でも傑作の部類ではないかと思う。 とにかく説明してしきれるレベルの怪異ではないので、ひたすら“あったること”として書くしかない…

【+3】声なき説教

淡々とした筆致と的確な描写によってかなり珍しい怪異が描かれており、またこの文調が怪異の質と非常によく合っていると思う。 読み通して思ったのは、タイトルの付け方に一工夫欲しかったということ。 “説教”というタイトルで祖父の死から始まれば、ある意…

【+2】遅刻の理由

“金縛り”ネタの登場であるが、金縛り中に身体を押し込められるという怪異は初見である(厳密に言うと、自分の意志で目を開けたり閉じたりしているし、何ものかの力で両手両足を広げられたり縮められたりしているから、本当は“金縛り”とは言えないかもしれな…

【−1】はさみ

はさみを持って現れるあやかし(床屋の霊)は非常にインパクトがあるが、結局作品としてはそれだけで成立させてしまったという、かなりお粗末な内容であると思う。 要は取材不足(情報不足)であり、またその不足ぶりを開き直ったような感じで書いてしまって…

【0】落胆

全体的にこぢんまりという印象であり、怪異の広がりもあまりなく、かといって受け狙いの笑いも軽いものである。 作品としては傷が少なくマイナス要素があまりないのは確かであるが、逆から見れば、プラス評価すべき内容もほとんどなかった。 言うならば“商業…

【0】フラミンゴ

結局、様々な付随的な装飾を取り外してしまうと、この作品の肝はフラミンゴの霊が見えるということに尽きるだろう。 さすがにこのような珍しい鳥の霊を見たという事例はおよそないと言いきっても良いと思うが、この希少性以外の部分は正直なところ評価しづら…

【+1】温泉ホテル

饒舌な文体で、非常に濃密な世界が展開されていると言えるだろう。 読者をグイグイと体験者の世界に引き込むことができており、またホテル内で体験した怪しい雰囲気がダイレクトに描かれていて、その意味ではストーリーとしての面白味があると感じる。 とこ…

【+2】代車の話

軽いノリの饒舌体で進められる展開は、流れに乗ってしまえば読みやすい半面、どうしても万人受けという感じがしない。 結局この作品も、この饒舌体が個人的に気に障ってしまった(これが投稿順のアヤというものであり、この手のノリの文体がやや多く出てきた…

【0】ととととと

タイトルにある“ととととと”と、文中にある“もやもや”いう2つのオノマトペにかなり大きな落差があり、それがどうしても引っ掛かってしまった。 オノマトペという表現技法は、ある種の事柄に対する共通認識として最大公約数的な解釈を容易に表してくれる便利…

【0】夜釣り

“イシダイだけは釣りに行かない”というおじさんの言葉で、完全にオチが読めてしまった。 まさに“都市伝説”にまで出てくるほど有名なパターンであるため、減点は致し方ないところである。 ただこの作品の場合、マイナス評価とならなかったのは、中盤に出てく…

【−1】成果

全てが“思わせぶり”な推測だけで進行しており、それを裏付ける事実が全く提示されていないために、“実話”として不完全な構造になっているように感じる。 はっきり言えば、この夫婦が連休中に樹海(あるいは他の心霊スポット)へ行ったという証拠もなく、また…

【+1】ズーム・イン!

人間の姿をした霊体が突然襲いかかるように目の前に迫って来るという事例はそこそこあるが、景色そのものが目の前に飛び込んでいくというのはあまり例がないと思う。 その原因が少々罰当たり的発想の体験者の思いだから、翌朝の首が回らない現象程度で済んだ…

【0】霊の重さは…

語り口は今風なのであるが、とにかくオーソドックスを通り越して、一歩間違えば“都市伝説”に近い内容になってしまいそうなほどであった。 しかし語りの部分での臨場感と、最後に事故現場に戻ってコップを直す場面があるため、何とかマンネリ化されたパターン…

【+3】落ちてくるもの

非常に貴重な怪異体験である。 あやかしが落ちてきて実際にそれにぶつかって人が負傷するという事例はあまり聞いたことがないし、それが同じ場所で複数起こっていることが凄い。 妖怪として伝承されているものの中に似たような存在があることは確かだが、人…

【+1】約束

全体を通して読むと、何か“よくできた話”という印象が強く感じられた。 その理由として挙げられるのは、体験者が幼稚園時代に体験した怪異であるにもかかわらず、体験者の思考が大人そのものであるという点である。 それが如実に出ているのは“死因まではわか…

【−1】がらがら、ちーん

何と言っても無駄なぐらい体験者のキャラが立ちすぎている。 怪異の弱さをカバーするためにわざとやったという推測も成り立つが、それにしてもやりすぎという感が強い。 他の講評者の反応を見ると、完全に失敗という気がしてならない(私個人としては、チャ…

【−1】廊下

“あったること”の報告としてであれば、この程度で十分であると思うのであるが、“実話怪談”という一つの作品としてみた場合、かなり物足りなさを覚える。 話者自身が体験者であれば問題ないだろうが、話者も間接的に“話”を聞いただけ、つまり下手をすると“噂”…

【0】脱衣場の少年

一人称独白体、しかも若者らしい軽い調子で書かれているが、文体そのものには破綻がなく、わりとすんなり読めるレベルであったと思う。 しかしながら、体験した怪異を紹介するのに適したスタイルであったかというと、どうもしっくりこないというのが正直な印…

【−1】“*”

タイトルを見た瞬間何か面白そうな印象を受けたのであるが、読んでみると、怪異の内容があまりにも弱すぎる。 特にいけないのが、一回的なものではなく“時々舞っているらしい”という、変な終わり方になっている点である。 何度も目撃しているかのような、し…

【0】にゅーっと

“井戸神様”の祟りについて書かれた内容であり、特に祖母の体験した“井戸から手が出てくる”という話は興味深いものがあった。 しかし、この作品の場合気になるのは、いわゆる“伝承民話”語りの調子で書かれた文体である。 古来より伝わる“伝承民話”の全てが創…

【+1】ぐらり

いわゆる“狐狸に化かされた”のと同じような怪異であると思うのだが、何と言っても“自宅で”それに遭遇したという例はほとんど聞かない。 この希少性は得難いものであると思う。 しかし怪異の説明そのものがかなり粗く、家が傾いて体験者自身とトランプが滑り…

【+3】根

これは希少性だけで十分評価に値する作品である。 どちらかというと“奇病”の類ではないかという印象なのであるが、それ故に、どのぐらいの期間症状があったものなのか、根の大きさはどのくらいだったのか(排水溝に流せるぐらいだから、さほど大きくないと思…

【0】おぼろげな

子供の頃の目撃談にしてはそこそこ鮮明であるという印象であるが、目撃以上の広がりがない。 むしろこれだけしっかりとした目撃談にもかかわらず、体験者自身が“気のせい・見間違い・ハッキリ憶えてない”を連発するために、もっと重要な記憶が欠落しているの…

【+3】ボール

ありきたりなタイトルをつけておいて実は相当希少な怪異を持ってくるあたり、怪談好きの読者の心理を上手く掴んでいると思う。 そして何より秀逸なのは、最後の一文で今までの雰囲気を全てひっくり返してしまうような強烈な怪異を提示してくるところである。…

【+2】平気だよ

怪異自体はへたをすると単なる思い過ごしと受け取られてもやむなしというレベルなのであるが、怪異の前にしっかりと“危ないからね”という友人の一言があり、それが見事に伏線となっているために怪異として認識できたと言えるだろう。 おそらくこの伏線がなけ…

【−6】どこどこどこん

内容・表記・展開の面において、著しく酷似している作品を確認したため、上記の評点とした。 作者にとっても、また講評者自身にとっても大変厳しい判断であるが、類似の度合いが不自然すぎるという結論である。 またそういうことに気付いてそれを指摘するこ…

【−5】入っています。か?

一言でいってしまえば、怪異を作るのに失敗してしまって作品であろうか。 実際、自分が普段使い慣れているトイレで異変があれば、違和感を感じるのは当然だと思う。 だがこの違和感を怪異と直結させて見るのは非常に危険である。 極端に言えば、病気になった…

【+2】階段

水子霊に関する蘊蓄であるが、これは知識不足か初見であった。 ただその内容を読むと妙に納得できるところであり、それなりに時代を経て語り継がれている説ではないかとも思い、そのあたりでの違和感はなかった。 それよりもむしろ、この説がストーリー全体…

【+3】光

怪異の本質を書くという観点から見れば、まさにお手本と言うべき作品。 簡潔な文であるが、過不足なく内容が書かれており、さらにきちんと怪異の核となる部分でしっかりと話のオチをつけている。 特に文句のつけようのない書きぶりであると思う。 ただし、怪…