2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【+1】私の勝手

とにかく冗長。 リアリティー維持が目的だと思うが、ここまで長いと、グロ系あやかしの目撃談としてはインパクトに欠けてしまうのではないかと思う。 文章自体がしっかりとしているので、途中で破綻したり、読み手が飽きてしまうようなことはないと思うが、…

【−6】満月の夜には

同一シリーズの前作と思しき作品『あかずの間』で指摘した問題点が、この作品でも明瞭に現れている。 ここでも“満月の夜には何かが起こる”ということで患者の死が取り上げられているが、これもたまたまといった方が自然な出来事であり、むしろ肝心の怪異はそ…

【+1】廃墟取材

気配と音のみの怪異、しかも恐怖の事実が後から分かるという、インパクトの面ではどちらかというと不利な内容であるが、それなりに健闘している印象である。 特に廃墟の探索の場面はジリジリと怪異が迫っているという雰囲気が前面に出ており、なかなか上手い…

【0】若さゆえ

具体的な怪異の肝をしっかりと押さえて書いているのであるが(少々説明描写が足りないと感じるところが多いが)、この作品の場合、どうしてもそれ以上に気になる記述がある。 “100%超常現象に遭遇できる手段”というものがあるならば、絶対に手に入れたい…

【−4】あかずの間

病院の“あかずの間”というネタとしては非常に興味のあるものであるにもかかわらず、全く内容が不発である。 その場所があかずの間になった原因が痴情の果ての殺人事件という事実は、普通の病院の怪談話を超える強烈なものであることは確かである。 しかもそ…

【0】白いハンカチ

亡くなった直後の人が最期の挨拶に来るというパターンであるが、体験者以外の人物が実際にその霊体を目撃している、そして亡くなった人が品物を渡そうとしている点で、希少性が高いと言えるだろう。 作者もその部分を考慮して、この部分を上手くメインに据え…

【+1】繋がった先は

この作品に書かれているエピソードは、徹底的に突き詰めるとおそらく怪異ではない、単なる混線が原因の“偶然に起こった出来事”である可能性の方が強いのではないかと思う。 だが“真の怪異が書き方によって胡散臭い出来事”に変わってしまうのとは逆に、“単な…

【−2】ちょっとかわいそうな話

“お経を唱えても効かない”という話も、この10年ほどで急速に一般化してしまった感のある内容であり(おそらく初出は稲川氏の『ゆきちゃん』あたりに求められると思う)、それだけを怪異の肝とするエピソードではやはり評価は低くせざるを得ない。 そしてこ…

【+2】温かい

怪異のパターンとしては、いつもの“金縛り”ネタの域を超えていないという感じなのであるが、そのディテール部分での表記に非常に惹かれるものを見つけた。 “意外なことに金縛りだけは一度しか経験がない”という書き出しが、何とも新鮮な印象を与えてくれる。…

【0】ナビ

一応“陰陽師”という肩書きをつけている術者であるから、いわゆる“遠隔操作”によって結界を張ることはそれほど難しいことではないという気はする。 もっと能力があれば“自分で見ながら”遠隔操作ができるほどの腕前になれると考えられるので(おそらく黒田さん…

【0】霊看

霊の出現と患者の完治がいかにも密接に関連付けられているように見えながら、実は明確な証拠となるような事柄は全くない。 看護師としての守秘義務があるのでどこまで情報を出して良いか微妙なところであるが、患者であるお婆さんの病状の変化が全く書かれて…

【0】デェジョブ

タイトルを見た瞬間思いついたのが“デジャヴ”の訛ったもの。 そして読み始めると“何か同じところをぐるぐると歩いている”という記述があり、ますます“デジャヴ”説に傾く。 ところが一気に…牛にしてやられてしまった次第である。 久々にタイトルで一本取られ…

【0】ブクロ

声の怪異であり、どうしてもそれだけでは小粒感は否めない。 作者(=体験者)なりに錯覚ではないことを強調しようという努力はしているものの、完全に成功しているとは言えないという印象である。 一発目の時は後ろの座席にいる友人との距離に問題があると…

【+3】プレゼント

“怪を以て人を語る”ことが怪談の一つのフォームであるならば、まさにこの作品は優れたものであると言っていいと思う。 怪異については小粒というよりも平凡な心霊体験という感じであり、直接霊から物をもらうという希少性は評価できるが、オーソドックスな書…

【0】足元にすがりつく幽霊

整合性で疑問を感じるところがあり、その部分の説明がしっかりとなされていないために、どうしても高評価にまでは至らなかった。 まず一番気になったのは“週刊誌”のエピソード。 この流れのオチは昭和時代の怪談話の典型的なパターンであり、“体験者が出会っ…

【+1】子供の頃から

体験者の鏡に対する恐怖心が前面に出ていると言っていいと思うが、その感覚が功罪相半ばしているように見える。 この恐怖心を軸にしなければ怪異はただの“写真の怪”になってしまうために、どうしても提示が必要な感覚であることは間違いない。 だが逆に、こ…

【+1】投影

何事にも適度なレベルというものがあるわけだが、この作品の場合、度を超した描写によってせっかくのリアリティーが失われている。 怪異の目撃の場面であるが、原付で通りがかった空き地に思わぬものを見かけ、さらにそこに映し出された“殺人”の場面に遭遇す…

【0】理

本当にルームメイトの死と呪術に因果関係が見いだせたのならば相当貴重な内容になるのであるが、結局その部分が呪術を掛けた“本人の解釈”のレベルで止まっており、どうしてもしっくりこなかった。 特に問題に思ったのは、その解釈が自分の術が成功したためと…

【+2】落成式に出たモノ

怪異としては小粒感があるが、目撃者の多さがやはり希少性を高めたと言える。 25年前の中学校の生徒の大半といえば、100や200ですまない数の目撃者であると考えられるわけで、それだけの数の人間が同時に目撃するだけでもかなりすごい“事件”であるだ…

【0】エレベーターで

エレベーターに乗っていない人間が、そこで起こった怪異について確認できたという、ある意味非常に珍しい体験であるだろう。 大人では思いつかない遊びがきっかけであるが、それでも妙な説得力があり、ストーリーの展開としての面白さがあると思う。 だが、…

【0】ワールド

まずタイトルが何を意味しているのかがさっぱり解らなかった。 他の方の講評を読んでようやく、それがとある漫画に由来するものとわかったが、残念ながら名前を聞いた程度だから、結局意味自体は未だに理解できていない状態である。 サブカルチャーに由来す…

【+2】チェック

霊の定義の一つとして、生前なしえなかった(あるいは満足し得なかった)ことに執着しているために成仏できずにこの世に留まっている、というものがある。 この作品の怪異は、まさにこの定義のままに居着いてしまった霊と言うべきだろう。 しかし、このよう…

【+2】忘れ物

何かイリュージョンを見ているような気分にさせられる怪異である。 まず最初に、袋の中に種も仕掛けもないことを示すかのように“男ものの黒い革靴”があることを提示しておく。 そして車庫に戻って持ち上げてみると“女性の泣きわめく声”がして、放り出すと“何…

【+4】ポラロイド限定

“心霊写真”ネタとしては最上レベルの作品であると思う。 まず証言者がプロのカメラマンであり、またポラロイドというトリックがしにくいカメラによって写されているというところに怪異の信憑性の裏打ちがなされている。 さらに、これでもかと言わんばかりに…

【−3】痴漢

ほとんど何の関係もない人間が、怪異に遭遇している思しき人物の状況を目撃し、それを怪異と認定して書く場合、それなりの説得力がなければ読者にまでその場の雰囲気が伝わりづらく、下手をするとただの“異常者”の目撃談になりかねない。 この作品では、まさ…

【+1】おんぼ様

昔語りということで結構色々な事柄を書いているのであるが、冗長という感じの方が強く残った。 怪異自体がそれほど劇的なものではなく、“あったること”を書くだけで十分事足りるという印象であり、体験者自身のプロフィールや顛末などを書く必要はなかったと…

【+1】仕事上…

怪異の性質上、徹底して恐怖感を煽るような書き方にすべき作品がある。 この作品はその典型と言ってもおかしくないのであるが、中盤あたりで非常に横着な書き方になってしまっている。 しかもこの書き方の原因が、体験者が“見える”人であり、結構そのような…

【0】キンコンキンコン

前半部分は“金縛り”と“夢オチ”というかなり危ない内容であるかと思わせつつ、最後に姉弟で同じ体験をしていたという締めくくりになっており、良い意味で裏切られたという印象である。 しかし怪異としては小粒であるし、二人が体験した“音”の怪異についても実…

【−1】いい天気

いわゆる“見える”人の体験を書いた内容であるが、やはり厳しい部分があると言わざるを得ない。 この種の作品でよく指摘する“見える人特有の横着”と言うべき部分が、怪異の描写に明確に出ている。 “壁から人間のパーツが生えている”という怪異であるが、もっ…

【+1】飛んできたもの

自転車を走らせようとして動かないのでふと下を見ると、地面から生えた白い手が車輪を掴んでいた…という話を散見するが、動いている車輪を無理矢理止めて事故を起こすという話は珍しいと思う。 それだけに禍々しさを感じるし、何らかの因果関係があるのでは…