『世界の「未知生物」案内』

本当にいる世界の「未知生物」(UMA)案内

本当にいる世界の「未知生物」(UMA)案内

まさに労作。詳細なデータまで掲載されていないが、情報としてはそれなりの信憑性があると見てよいだろう。長年UMA情報を収集してきた著者の集大成と言うべき内容である。2ページ見開きからわずか数行という差はあるが、全部で891体のUMA情報である。本の装丁や、表紙にあるチープなイラスト(ただしコアなファンであれば中岡俊哉氏の『世界の怪獣』を彷彿とさせるイカしたやつだ)で少々胡散臭い雰囲気を醸し出しているが、基礎的な資料として十分耐えうるだけの存在感がある。もしこの手のものに興味があるならば、絶対に「買い」であると断言して良い。


情報量の多さも評価の対象であるが、著者である天野ミチヒロ氏の執筆スタンスが実に素晴らしい。情報は情報として紹介しているが、誤認と思われるものなどに対しては明確に疑念を呈している。また捏造などの問題がある情報については、それを積極的に指摘している。それはUMA界のビッグネームであっても容赦ない。少々とぼけながら軽い調子でツッコミを入れている感もあるが、この種の本では異例のダメ出しと言ってもいい。この小気味よい姿勢が、却ってこの本の情報の確かさを裏付けることになっている。当たり前と言えば当たり前のことなのだが、これが出来ずに噂を一人歩きさせている(意図的に読者を煽るためにやっているのは間違いないのだが)本が多い中で、良心的且つ良識的である。


残念なのは、版権の問題だと思うのだが、有名どころの写真が少ないという点。「これがないのか!」と思わず心の中で叫んだものが数点ある。なかなか秀逸なイラストで補っているが、やはり“本物”があった方が迫力が出たと思うので、惜しいの一言である。


全体的には、初心者から相当のマニアまでを納得させる内容。特にデータベースとしては、時間的経過による劣化以外に評価を落とすことがないと言っても良いのではないだろうか。恐るべき本である。