【−4】思いたくはないけれど

結論から言ってしまうと、問題の絵が怪異を引き起こしたという判断は全く出来ないということである。
この絵が誰から送られたものかも判らない、しかも絵の裏には髪の毛の束と、傘連判に似た呪符と思しきものが入っており、間違いなく何らかの呪いを発動させる装置であるのは間違いない。
だが、結局友人宅では何ら怪異は発生しておらず、ただ“気味が悪い”という印象しか与えることが出来ていない。
友人は、三軒隣の家の不幸についてこの絵が引き起こしたと断定しているが、その根拠はこの絵をゴミ出しした場所が三軒隣の家の前ということだけであり、果たしてその家の者がその絵を飾っていたのかどころか、絵に触れたのかすら確認されていない。
これでは“思い込み”による主観的憶測の域を出ない内容であり、いくら絵に呪いが仕掛けてあったとしても、三軒隣の家の不幸の原因をこの絵に帰するのは無理があるとしか言いようがない。
全体を通して薄気味悪い雰囲気は作られているのであるが、事実として起こった内容と絵との関係が不明である以上、これを安直に結びつけて考えるのは“実話怪談”としては“反則”と言わざるを得ないところである(もしこれが創作であれば、二つの事実を意図的に並べるだけで、これらが底流で繋がっていることを読み手に対して示唆できるだろう。だが、実話である限り、決定的な根拠となるものが提示されなければ、読み手を納得させることは不可能なのである)。
客観的な根拠があることが、創作にはない“実話”の必須の条件であり、これがないままいくら雰囲気で書き連ねても、その信憑性を高める効果にはなり得ないのである。
三軒隣の家の不幸と絵との結びつきが明らかではない、つまり絵が怪異(絵によって引き起こされてなければ、ただの偶然の産物でしかない)の要因とは認められないが故に、大きなマイナス評価とさせていただいた。
関連付けられる証拠があったなら、もちろんプラス評価としてもおかしく内容なのであるが。