『怪処 創刊二号』

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去年の夏に創刊、そして昨年末に二号と発刊された「オカルトスポット探訪マガジン」と銘打たれた雑誌である。とはいうものの、どこかの出版社から出されたものではなく、あくまで“同人誌”の括りである。一般の書店では扱っていないし、上のブログから注文して発送してもらうしか購入の手段は今のところない。既に創刊号は完売、おそらくこの二号も近いうちに品切れになることだろう。商業誌なら雑誌でも古書店で見かけることがあるが、果たして同人誌もそのような扱いになるのか個人的には解らないので、とりあえず興味がある人は品切れになる前に購入しておいた方が無難だと強調しておきたい。
責任編集は「とうもろこしの会」。オカルトとその周辺の研究活動では名の知れた団体である。そして会長の吉田悠軌氏は、商業誌で単著も上梓しており、怪談の手練れの一人である。この好事家が中心となって出す雑誌である。面白くないわけはなく、王道の怪談話からあやかしを求めてのレポート、さらに意表を衝くとしか言いようのない“一癖も二癖もある店紹介”まで、とにかくあやしさ炸裂の内容となっている。しかも“同人誌”と個人的にカテゴライズしているが、そのレイアウトは商業誌に限りなく近く、非常に小洒落た印象が強い(表紙に女性モデルまで使っているのだから、本格的だ)。広告が一切入っていないだけで、本物の雑誌、あるいはオールカラーだからムックと称しても差し支えない体裁であると思う。完成度は恐ろしく高いと言えるだろう。(このあたりは同人誌事情に疎いので、あくまで個人的感想である)
この雑誌が並大抵のレベルではないと感じるところは、ごった煮的な内容がほとんど一個人の手によって繰り広げられている点に尽きる。一部のコンテンツは複数の執筆陣が分担しているが、メインの部分は吉田氏一人が切り盛りしていると言って間違いない。この多岐に渡る記事を編み出す知識と熱意には脱帽しなければならないだろう。そして広義のオカルトの範囲で自由闊達に筆を動かし、刺激的な情報をやつぎばやに繰り出す力量に羨望を覚えざるを得ないのである。好事家として一つの極点に立つことに成功したのではないかという気すらする出来映えである。
“吉田会長”テイスト満載のこの雑誌、単なる自己満足には終わらず、あやかしの好事家としての粋を集めた上級の作であると言える。とにかく好事家ならばこういう冊子を作ってみたいとグラリと来るものを持ち合わせた一冊である。次回作でどういう面白いものを見せてくれるのか、今からワクワクしている次第である。