2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【−5】湖底の清流

結論から言えば、これは怪談ではないのでプラスの評点が全く付けられない。 ただ単に琵琶湖にまつわる不思議な話をかき集めて、エッセイ風にまとめたというレベルの作品である。 しかもその殆どが一般的に流布している“都市伝説”の域を出ない話ばかりである…

【+2】みのむし

内容を要約すれば、心霊写真が撮れた経緯とその後の対応に関する不思議ということになるだろう。 それなりに恐怖を感じる怪異であると思うし、文章でそれをよく表現できているという印象を強い。 しかしながら、全体的なストーリーの展開で言うと、どうして…

【+3】縁呪

厳密に言えば、この作品は真の“呪い・祟り”系でない、もっと様々な“負の感情”によってビッシリと構成されていると言えるかもしれない。 “祟り・呪い”とは、「祟る側」の存在ではなく、「祟られる側」の存在によって成立する世界であるという。 祟ろうとして…

【+1】お払いさん

なかなか興味深い内容なのであるが、怪異であると決定付けるためのカギが完全に提示出来ていないために、かなり損をしている。 まず、家族が事故から坊さんの元を訪れる時間的経過が明瞭でない、そして箸だけで言い当てたのか、それ以外の情報を与えたのかが…

【+2】シミ (2)

怪異だけ抽出するとかなり強烈な内容に属するのであるが、何かインパクトに欠ける部分があるように感じる。 全体的には饒舌体の部類に入ると思うのであるが、特にそれが強く感じるのが冒頭の話者(作者)の“前説”部分と、末尾の体験者の事後の行動部分である…

【−4】究極の選択

結局この作品の場合、解説は多いのだが、肝心の怪異は全く起こっていないと言っていいレベルであり、その部分で大きく減点せざるを得なかった。 実際一部の“怪談”ではほとんど怪異らしい怪異もなく、ただひたすら体験者の主観による不安感や恐怖感だけで成立…

【−3】声

怪異の内容に関しては金縛りと声になるが、可能性として疲労やストレスといった生理的な異変であることが否定出来ないレベルである。 やはり真っ正直に“テスト期間中”というかなりハードな生活を強いられることを最初に書いているために、読み手からすると完…

【+4】たえこ

“こっくりさん”ネタとしては間違いなく上位に入ってくるだろう、秀作である。 希少性から考えると、“こっくりさん”である程度整合性が確認出来る情報が得られたという点は見逃せないところであるし、それよりも“自動書記”によって普段絵が下手くそな子供がま…

【+3】冬のアレ

電化製品と霊体との相性の良さは方々で聞かれる話であるが、まさか静電気に反応するとは思ってもみなかった(よく考えれば当然あり得る事例なのであるが)。 この静電気と霊体の一連のエピソード報告だけでも、この作品の価値は非常に高いと言うべきだろう。…

【+3】百鬼朝行

以前に“箇条書き”で怪異を表記した作品があったが、この作品はまさにそれの進化系であると言っていいだろう。 それぞれの怪異を取りだして書いたとしても、連作でない限り、どうしても怪異の小粒感は否めない。 そこで時系列的に怪異を並べて、必要最小限の…

【+2】穢れたお清め

心霊の世界の常識で言うと、“水子”の霊は生みの親である女性に憑くことになる。 “水子”の本質は怨みや呪いではなく、もともと情愛に飢えた上での行為であり、それ故にまず母親に取り憑き、さらに愛情の裏返しの嫉妬により兄弟にまとわりつくことになる。 だ…

【0】深夜の戦い

これもまた希少性の高い“猫”ネタである。 この作品の場合はしっかりと怪異の肝を見定めて、猫とあやかしとの対決場面をメインに持ってきている。 ただ残念なのは、肝の核心である、見えないあやかしとのバトルについての描写が格段に少ないのである。 猫に関…

【+2】実験

人間でも同じであるが、相手の深い部分にまで踏み込んでしまうと、間違いなくその人との関わりが生じてしまう。 いうならば、霊も元は生身の人間であり、当然、生身の人間と全く同じ反応をすることは自明の理であるだろう。 体験者の見たサイトの内容は霊と…

【−1】爪痕

個人的感想から書かせていただくと、とにかく“猫”ネタになると、作者がやたら癒しの方に話を持ち込みたがる傾向があると思うし、講評の目もそちらに行きがちになる。 この作品も、死んだ猫が部屋に居着いているということの方に焦点を当てて、その印象を活か…

【0】黒い飛行機

文体の持つ雰囲気は重厚、それ故に何か禍々しいものを感じ取った体験者の感情の揺れはそれなりに迫ってくるものがあったと思う。 また構成としても、最後に体験者の怪異に対する疑念で締め括っており、意図を持って作品を書いているという印象が残った。 と…

【0】退職理由

怪異の肝にあたる部分は、劇的な印象は少ないが非常に丹念に書かれており、体験者の恐怖感を追体験出来るレベルにまでなっていたと思う。 だが問題点はその前後の部分、体験者が働いていたテナントフロアにまつわる内容である。 “その売り場はやばいって”言…

【+3】シミ

純粋に怪異としては相当強烈な部類に入ると思う。 体験者に対して物理的な攻撃を仕掛けている点といい、またとんでもない自己主張を繰り出してくる点といい、まさに凶悪な地縛霊という、非常においしいネタであると言えるだろう。 こんな話を拾ってきただけ…

【−4】右端

最後の一文“次に行く際には絶対に右端に座って真相を確かめようと思います”で椅子から転がり落ちそうになった。 結局のところ、奇妙な話の途中報告でしかなく、怪異が怪異であるかどうかの検証も行われていないことを作者自身が告白しているわけである。 し…

【+3】天国で

読んでいてしみじみと「いい話だ…」と感じつつ、また「いい時代、いい人達だ…」と感慨にふけった。 不思議を不思議としてなんなく受け入れる人たちが活写されており、それだけでその時代や地域の“風俗”というものがダイレクトにイメージ出来る素晴らしい作品…

【+2】伝えたかった事

最後の展開のひっくり返し方が絶妙であり、単なる“見える”人の体験談のような予定調和とはひと味違う内容である。 おそらく背後霊の一人(守護霊はまさしく人を守護出来るだけの高次の霊であるから、多少“見える”程度では感じることも出来ない)が見えたのだ…

【+3】エア・バイク

“投げっぱなし”怪談としてはなかなかの出来映えであると思う。 おっさんに関する情報が不足しているきらいはあるものの、怪異の肝である“バイクに乗った格好のまま滑るように移動”している部分だけが抽出されており、特に情報が足りないことによる不満は感じ…

【+1】白帯

かなり希少性の高い内容であると思うのだが、怪異の記録として必要な情報が不足している。 多くの指摘がある通り、このあやしい“白帯”の状態や様子がほとんど書かれておらず、せっかくのあやかしに対するイメージを想像することが出来なかった。 特に“首吊り…

【−1】最後のいたずら

全体的にすがすがしすぎて、“怪談”特有の雰囲気というものが感じられなかった。 “怪談”と言っても全てがおどろおどろしいものにする必要もないし、笑いを誘うものも当然対象となる。 しかし“怪談”特に“実話怪談”と銘打つからには、その主たる目的は“怪異”を…

【+1】梟

典型的な“異界”譚であるが、梟のような人間以外の特別な存在が登場するケースは珍しい。 ただこの作品の場合、その特別な存在の登場する部分での展開が悪い意味でファンタジーっぽくなってしまっており、少々リアリティーに欠けるという印象を持った。 梟と…

【+2】三人の侍

“金縛り”ネタとしてはそこそこの面白さであり、結構評価出来るものという印象である。 金縛り中に異形のものが現れ、体験者がそれに対して突拍子もないリアクションをかますというパターンはマンネリに近いものも感じるが、淡々とした怪異の報告ではなく、く…

【+1】九十番目

“百物語の百話目を語ると怪異が起こる”と言われているが、ビデオにため込んでもそれが成立することが判っただけでも良しということになるだろうか。 ある意味貴重な実験であり、作品よりもそちらの方に興味が湧いてしまった次第である。 ただし怪異としては…

【+3】箱

ネタだけで評価すれば最高レベルと言ってもおかしくないのであるが、あまりにも雑然としすぎている印象である。 一番失敗していると思ったのは、冒頭と末尾のエピソードである心霊写真である。 “祟り”系の展開で十分強烈な内容になっているところに畳みかけ…

【−2】怒りのメタファー

読み終えて真っ先に思ったのは、とにかく「夜の国道でそんなにはっきりと見えるのか?」という疑念である。 例えば、赤い車の運転手の髪の毛やサングラスの色は明瞭なのに肌の印象は不鮮明であるとか、ニヤニヤ笑う男の歯並びまで“運転している彼氏越し”に見…

【−2】泥人形

いくらリアルに描写されていても、しょせん夢は夢でしかないということである。 突き詰めれば、“あったること”としての怪異は、カップルが話していた“獣臭さ”が電車内にしていたということだけであり、その事実すら実は本当に動物が車内にいたかもしれないと…

【+2】鳴き声

“あったること”だけでは今ひとつ盛り上がりに欠けるように感じるので、体験者の主観的解釈があって初めて怪異の内容が活きたというところだろう。 ただしその解釈が正解であるのかと言われると、体験者のキャラクターに合っているということだけであって、決…