『日本の謎と不思議大全』

日本の謎と不思議大全 東日本編 (ものしりミニシリーズ)

日本の謎と不思議大全 東日本編 (ものしりミニシリーズ)

日本の謎と不思議大全 西日本編 (ものしりミニシリーズ)

日本の謎と不思議大全 西日本編 (ものしりミニシリーズ)

発行元の人文社は地図販売で有名であるが、最近は古地図を使って伝承地紹介をおこなっており、その流れで出された本である。東日本編と西日本編の2冊で700前後の伝承を紹介している。それなりのボリューム感のある内容となっていると思う。


どうしても47都道府県を均等に満遍なく紹介しなければならないのか、1都道府県あたり6ページの制約がある。その中に10〜15件ほどの記事が紹介されている。しかし地域によって伝承の質量に違いがあるのは言うまでもなく、これを無視して均一にしているために、どうしても感覚的にバラツキがあるような気がしてならない。配慮が必要なのは解るが、内容の充実を図るのであれば、やはりページの差もつけるべきだったように感じる。京都や東京などの伝承密集地帯では有名どころの伝承も省かれ、記事1つあたりの記述量も満足できるものにはなっていない。逆に某県などは6ページを埋めるのに、図版を大きくしたり無駄な記述を書いたりして苦労しているようにも感じる。


紹介されている不思議の内容であるが、5つのカテゴリーに分類されている。特筆すべきは“埋蔵金”のカテゴリーである。伝説・不思議スポット・未確認動物・霊山という他のカテゴリーは、過去の類書でもしっかりと取り上げられており、取り立てて目新しさはない。しかしこの本では埋蔵金伝説を独立させ、かなり詳細に紹介している。どちらかというと怪奇マニアよりも歴史マニアの方に向いていると言うべきだろうか。その傾向を受けているせいだと思うが、地方の変わるページで見開きの伝承関連コラムが掲載されている。これが初心者向けとしてなかなか上手くまとめられており、それぞれの内容についての簡単な概説になっている。


ただし怪奇マニアとしては、どうも物足りなさを感じざるを得ない。殆どの記事内容は既に別の場所で読んだことのあるもので、また紹介内容についても珍しいと思わせるものがなかった(巻末の参考文献リストを読めば、大概の本を所蔵していることが分かるのだが)。僕個人としては、調べものの際にまとまっているから使いやすいという利点があるだけで、あとは図版の美しさという点がお気に入りという程度である。だが、初心者にとっては良心的な作りであるだろう。基本的な知識はしっかりと押さえてあるので、中途半端な紹介本とは一線を画しているのは間違いない。歴史嫌いの青少年に読ませてやりたいところだ。