[怪談系」『これを読んだら呪われる』

これを読んだら呪われる ~封印呪話~ (封印呪話 (第1巻))

これを読んだら呪われる ~封印呪話~ (封印呪話 (第1巻))

表紙から「いかにも」と言わんばかりの体裁である。いわゆる“呪いの連鎖”のパターンを次々と詰め込んだ本と言っておけば、大体のコンセプトは理解できるだろう。しかしバリエーションが多いから優れた本であるとは言い難いのも、この本の特徴である。


とにかくどこかで読んだことのある話ばかりである。多少は変化球を加えているのだが、亜流にとどまっているだけで、既読感の方が強烈に残るばかり。もっと悪い言い方をすれば、どの話もオリジナル度が低く、怪談話を読みこなしている人間にとっては陳腐の一言で片付けられるレベルだ。まあ「この話を読んだら三日以内に不幸な目に遭う」とか「読んだら金縛りにあって悪夢を見る」とか平気で書いている段階で、既に怪談マニアの失笑を買うことは間違いないところである。そんなとんでもない話が実際に存在するなら、公の場で問題になっているはずでしょう…


また章の最後に置かれている「心霊写真」も、かなり煽り気味の雰囲気優先の代物だろう。一応本物と書いているが、「霊感の強い人なら何かが見える」「無理に霊体を探さないでください」という言い回しは落胆物である。結局霊体が写っていないと言っているのと同じレベルであり、怖がらせるだけの仕掛けと言われても致し方ない内容である。仮に本物だとしても、一目見て明らかに異常であることが判るような写真以外は掲載しない方がいいだろう。雰囲気優先で煽ってみても、冷静になれば子供騙しの類にしか見えない。


総合的に判断して、この本は本格志向を模しただけの、実につまらないものである。特に致命的なのは、価格。この価格であれば、ビギナーはまず手に取ってくれない。そしてマニアは内容と価格を両天秤に掛けて、バランスが取れていないと判断するだろう。コンビニ本レベルであれば興味半分で買ってくれたかもしれないが、厳しいことには変わりはない。『封印呪話 第1巻』という表示があるが、多分第2巻は幻になる可能性が高いだろう。


追記:
奥付を見たら、協力・監修に北野翔一氏の名前があった。古き良き時代のテイストで“リング系”の話を勘案するとこうなる訳か…。ある意味、納得である。