【+2】生徒手帳

非常に不思議な怪異であるとしか言いようがない。
手帳を取り戻しに来たあやかしの正体が、生霊にせよ死霊にせよあまりにも肉感がある行動を取っているためである。
言うならば、体験者が手にしていた生徒手帳を奪い取ろうと揉み合い、しかもそれを取り戻すと途端に目の前から消えてしまう。
まさに生身の人間と全く同じ行為が可能でありながら、超常的な存在であるかのように物品と共に消え失せてしまうのである。
複数講評に“SF的”という言葉があったが、言い得て妙の評価であると思う。
ただ生身の人間と取っ組み合いをするような霊的存在は皆無ではなく、信憑性云々ということはないだろう。
信憑性の点で言えば、奇妙なのはあやかしを見た以降の彼氏の行動であるだろう。
こちらの方があまりにもお決まりのパターンであったため、少々胡散臭さが漂った。
体験者の住む部屋が何階にあったのか分からないが、携帯電話で呼び出すより先に階上へ向かうのが普通の行動であるだろう(しかもベランダにいるのはブレザー姿の女性なのだから、なおさらである)。
怪談話で信憑性について疑念を持たれる箇所とは、あやかしそのものにまつわる部分ではなく、それに付随する生身の人間の行動であることが多い事実だけ指摘しておきたい。