『関暁夫の都市伝説』

ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説―信じるか信じないかはあなた次第

ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説―信じるか信じないかはあなた次第

まず最初に、この本の著者である関暁夫氏が芸人であること、そしてこのネタがテレビで放映されて人気を博していることを知ったのは、この本からであることを書いておく。別に馬鹿にしているわけではないが、世の“研究家”と比べると遙かに胡散臭い存在である。特に【都市伝説】というジャンルは民俗学の研究課題として取り上げられることが多く、どちらかというとアカデミックな色が濃いという印象がある(むろん、ガセネタや曾孫引きで原型をとどめない酷い本があるのも確かであるが)。そういう先入観を持って読み始めた本である。

実はこの本を読み終えたのは去年の暮れ頃であった。感想はただ一つ「評価しようのないダメな本」であった。まず作者が【都市伝説】のカテゴリーを知らず、オカルト界の他のジャンルにまでカテゴリーの網をかぶせているというのが、全然気に食わなかった。特に“フリーメーソン”関連のネタが多く詰まっており、完全にジャンルを外してしまっていると思った。そしてとどめに「あとがき」にある『都市伝説=怪談話』や『オーパーツやUMAの特集を僕なりの都市伝説として…』という文言を読んで、完全に意気消沈してしまったのである。

では、なぜ今頃になってこの本を書評する気になったのかというと、今年になってから【都市伝説】関連の本が多数出版され、しかもそれらの多くがこの本と同じく“広義の都市伝説”ネタを扱っているという現状を認めたためである。つまり最新の【都市伝説】本が右へなれとばかりに同じ歩調を取りだしたのである。

【都市伝説】というジャンルはかなり新しいカテゴリーである。概念としては1980年代にブルンヴァンによって唱えられたのであるから、実は完全な定義というものが固定されていないと言っていい。逆から言えば確たる物証もなく人口に膾炙する最近の“噂”は、全て【都市伝説】として分類することも可能なのである。だから心霊や妖怪、超常現象、歴史の謎、UFOといったものまで全てひっくるめて【都市伝説】と呼んでも誤りではないのである。だが、オカルト界の常識とすれば、従来のカテゴリーを敢えてこの新しい概念に統合させる必然性も合理性も見いださなかっただけである。

だがそのようなプロセスを知らない人間にとっては、実証のない噂を全て同じステージで読むことに何の抵抗もなかった。いわゆる“トリビアネタ”の延長線にある知識程度の認識で受け入れることが出来たのである。そして今度は専門的にこれらのオカルト的なネタを扱う側が、すり寄ってしまったのである。

今年の流行の一つが【都市伝説】になることは必至である。だがこれが一時のブームで終わるのか、あるいは概念の定着にまで至るのか、それは全く謎である。ただ先は読めないが、この本が仕掛け元である事実だけは曲げることが出来ない。ということで、もしかすると大化けし、後世においてエポックメーキングと呼ばれるかもしれないこの本に対する評価として取り上げておく。
作者風に言うならば、「信じるか信じないかはあなた次第です。」というところか。