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おもわず誰かに話したくなる!都市伝説 (TSUKASA MOOK 41)

おもわず誰かに話したくなる!都市伝説 (TSUKASA MOOK 41)

今回紹介する中では、もっとも従来のカテゴリーに近い内容を多数掲載している。
各都市伝説の紹介に方法も、代表的なパターンを1つ提示し、その噂が生じた背景や蘊蓄を簡単に述べるというスタイルであり、これも正統派の都市伝説本を踏襲しているものであると言えるだろう。「都市伝説とは何か?」という質問が出てくるような初心者向きの、親切なガイドブックといったところであろう。
ただ“初心者向き”ということは、逆から言えばそれだけ新規なネタが少ないという意味にもなる。以前から都市伝説に興味を持っていた人からすれば記載されている噂の殆どは知っているネタであり、取り立てて興味を引くものはないと思う。というよりも、この程度の内容(扱っているネタ数が112)で“カバー付きのソフト単行本”の体裁を取ったことに疑問を感じるわけで、正直、都市伝説を本格的に扱っているサイトへ行けばもっと手軽に様々な情報が入手できるだろう。値段的に言えば、手軽な入門書とは呼べないところである。

最強の都市伝説

最強の都市伝説

オカルト系書籍の大御所・並木伸一郎氏が書いた都市伝説本である。ネタとしては従来のカテゴリーのものから、UMA関連そして流行りの陰謀史観ネタまで、最近の都市伝説本をかなり意識した作りになっている。
やはり凄いと思うのは、各ネタに関する並木氏の蘊蓄語りである。取り立てて長いコメントではないのだが、長年積み上げてきた情報量が桁外れに違うため、非常に興味深い内容になっているのである。さすがは大御所クラスの人の名が冠された都市伝説本は違うという印象である。
だがこの本の最も問題視されるところは、この並木氏を『都市伝説の本家本元』と紹介している点である。これは全くの誤解(というよりも、まさかこれで「並木伸一郎伝説」を作ろうとしているのか)。日本の都市伝説の系譜は、“現代民話”の松谷みよ子氏やそれに繋がる“学校の怪談”の常光徹氏あたりが本家である。並木氏はオカルト全般を網羅する巨人であって、決して都市伝説に限定される存在ではないのである。(当然都市伝説も守備範囲であるのは確かであるが、そこに限定するということは却って、並木氏の実力を過小評価することになると思う)
結局のところ、テレビで流行りだした新しい都市伝説概念を過去に遡って適用させていくと、並木氏のようなフォーティアンがそのはしりであると想定されるだけであって、決して最初から氏が都市伝説一本でやっていたというわけではないのである。むしろ最近のブームに便乗しているのが丸わかりで、あざといのを通り越して何か寂しい気がしてならない。

都市伝説の最も猥雑な部分だけを抽出したとも言える怪作である。
冒頭でメインライターである山口敏太郎氏が、最近の都市伝説概念の変貌を的を射た解釈で書き出し、その路線で執筆すると堂々宣告している。とりあえずネタの中心は芸能・マスコミ関連のゴシップ・タブーであり、それに関する相当量の情報を提示しながら展開させるスタイルである。中には非常に貴重な内容があると思えば、どうしようもない屑ネタまでまさに玉石混淆さながらの状態で詰まっている。典型的な“コンビニ本”であると言っていいだろう。
一応本のタイトルに“都市伝説”と冠しているが、むしろ芸能ゴシップ関連の本であると思って読んだ方がいいと思う。良い意味でのいかがわしさがプンプン臭ってくるタイプの本であり、上記の2冊とは一線を画する内容であるだろう。ただ都市伝説の概念は広げようと思えばどこまでも広がるものであり、それをうまく利用しているのがこの本である。一部の読者からは否定的な声が挙がる可能性もあるが、現在の都市伝説概念の変容を考慮すると、この本も“あり”だと言い切ってもいいかもしれない。


最終的にどの本がお奨めかということになるが、一長一短あるというところでお茶を濁しておこうと思う。ただし、よほどの人でなければ3冊とも買う必要はない。とにかくネタがかぶりすぎ。はっきり言って、みんな流行に便乗しすぎでかなり食傷気味だというのが、個人的な感想である。