『新耳袋 殴り込み』

新耳袋殴り込み

新耳袋殴り込み

最初から断っておくが、私と『映画秘宝』との接点はこれが始めてである。当然私は映画(映像メディアも含めて)全然興味はなく、木原・中山コンビが一世を風靡した『新・耳袋』関連書籍ということでこの本を購入している。従って、この本に関する評は、あくまで“怪談本”マニアから見たものであることを明記しておかねばならない。

結論から言うと、『新・耳袋』へのオマージュが込められていることは理解できるが、およそ怪談マニアが涙を流して読むという代物ではなく、熱心な“信者”の一部では暴動が起こるのではないかと思ってしまうレベルであった。勿論木原・中山両氏がこの取材に対して関わっているから、パロディとして小馬鹿にしていることは決してないことは間違いない。だがこの取材の全容をマニアの立場から俯瞰すると、わざと失敗して笑いを取ろうとしているのではないかという気にさせられる。いや“取材”と呼ぶにはおこがましいほどの初歩的ミスを繰り返しており、ある意味、夜中に暇をもてあましたヤンキー共が思いつきで肝試しをしに行っている類のものにも近いだろう(このくだらない取材に付き合っている面々が錚々たる肩書きを持っているから、そうは見えないだけなのだが)。多分映画関連雑誌の記事であるから、こちらのシチュエーション方が面白いのかもしれないが…

ということで、せっかくのおいしいネタなのであるが、結局うやむやの状態で終結してしまっている感が強い。ただ救いは、取材の結果としてそれなりの怪異が報告されているということであろう。これがあるから辛うじて、怪談本としての価値があると言える(しかもこれが超有名スポットでの出来事なので、打点はかなり高い)。それでも「『ナックルズ』だったら、各章のネタごとに2ページ見開き分の内容しかないよなぁ」と思いつつ、読み終えてしまった訳である。

表紙を見た瞬間、懐かしさのあまりレジに駆け込まずに、まず最初の章を読んで、自分の価値観(感性)に合うのか確かめてからでも遅くはないと思う。