『怖い本 7』

怖い本 7 (ハルキ・ホラー文庫 ひ 1-12)

怖い本 7 (ハルキ・ホラー文庫 ひ 1-12)

「超」怖い話Κ』とほぼ同時期に出された、平山夢明氏の書き下ろし“実話怪談”である。恐怖やえげつなさの度合いから見れば、まさに剛速球並みの強烈さである。やはり他の追随を許さないというか、インパクトの面では群を抜いているといって差し支えないだろう。ただし、その評価には“『Κ』と同じぐらい”という文言が付いてしまうのだが。

元々『怖い本』シリーズは、ケイブンシャ時代の『「超」怖い話』シリーズのデルモンテ平山名義の作品を集めた作品集から始まっており、差違というものがあまりないという印象が強い。この2つのシリーズの違いと言えば、結局のところ、平山氏の単著であるか否かのものであったという認識であった。ところが、今夏からは『「超」怖い話』の方も平山氏単著となってしまい、今までの垣根が完全に取り払われてしまったわけである。ということで、個人的な興味は“この2つの著作の違いはどこにあるのか”というところに集中した。

結論から言うと、この2つの作品に関して意図的な差違を感じることは出来なかった、ということである。勿論、配列的なものを考えると『「超」怖い話』の方が変化球を投げているという事実はあるものの、『怖い本』の方でもそれと同概念の作品が中間に配されており、これはあくまで編集作業上の問題であると感じた。要するに、この2冊の本の内容をそっくり入れ替えても、配列を変えれば同じ印象を持つ作品に仕上げることが出来ると見たわけである。言い換えれば、お互いの本の中に、それぞれの個性を象徴する話があるわけではないという感想である。共にコンセプトが“怖い”話であるから、やむを得ないと言ってしまえばそれまでであるのだが…

もしかすると平山氏自身には振り分ける基準というべきものが存在しているのかもしれないが、私も含めて多くの読者にはそれを見いだすことはほぼ不可能ではないかと思う。しかしながら、逆から見れば、この同時期に出された2冊の作品が甲乙つけがたいほどの拮抗した高レベルで書かれているということを示している。どちらが優れているという判断をつけることは不可能である。どちらの本にも「凄い!」と叫んでしまいそうな強烈な作品がしっかりと揃っているし、良い意味で均質化されている。最終話の方向性の違い以外には、質的な違いは殆どないと言って間違いなかろう。ある意味この2冊の本は双生児であり、どちらも読まないと損をすると言っておきたい。