『今度は落とさないでね』
今度は落とさないでね―2ちゃんねるの怖い話 (2ちゃんねる新書)
- 作者: 2ちゃんねる新書編集部
- 出版社/メーカー: ぶんか社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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だが、そのリアル感が逆にこの本の持つ限界を示している。果たしてここに掲載された記事がベストの“怖い話”なのかという手形がない問題に行き当たるわけである。実際、ここに掲載された“怖い話”の一部はまさに定番中の定番の都市伝説であり、「2ちゃんねる」というフィルターがなくとも、多くの人間が知っているのではないかと思われる。またほかにも某有名タレントのネタであったり、明らかに別のオリジナルをパクッた話、小咄っぽい創作話も散見できる。つまり“怖い”というコンセプトは間違いないのであるが、本当にこの手の話を読みあさっている人間にとって“怖い”存在になりうるのかと問われれば、厳しい回答しか出せないのが本音である。膨大な量のレスから拾ってきたことは間違いないと思うのであるが、それがベスト版であるかと言えば明らかに「No」と言うしかないのである。また「怖くないから初心者向き」という理屈も、ベストではないという指摘が出来る限りにおいて、やはり通用しないだろう。極端に言えば、2ちゃんねるにおける“怖い話”とはこの程度の雰囲気です、ということだけが分かる内容でしかない。
以前、2ちゃんねるの怖い話をセレクトした本が世に出たことがあった。この時著作権の問題が噴出したのであるが、それでも特定できる個人(2ちゃんねるのまとめサイトの管理人)がセレクトの任に当たっていたことで、何となく強烈な話が集まったという印象を強く持った。要するに、2ちゃんねるの掲示板そのものがネタの宝庫であって、それら匿名掲示板の記事を匿名のスタッフがセレクトしても決してまとまったないようにならないということなのかもしれない。“怖い”というコンセプトには様々なレベルがある。それらのどの位置に立つかを編集者自身の責任において決めておかなければ、雑然とした印象しか持てないのである。この本はそのマイナス要素が明確に出てしまった、悪しき例であると見ている。怖さのベクトルが違う話が羅列されている本は、それなりの幅があって面白味が増すかもしれない。だが、怖さのレベルや質感が異なる話の羅列は、段差がありすぎて、読んでいて非常に辛いものがある。結局その部分の方が強いと感じたために、この本はあまり楽しめる内容ではなかったということである。2ちゃんねるの運営母体そのものがタッチして編集しているだけに、著作権を考えずにもっと強烈な怪談をピックアップできたのではないだろうか。特化すべき部分を間違えたような気がしてならない。