『うわさの人物』
- 作者: 加門七海
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/04/26
- メディア: 新書
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だが、この能力に関する記述以上に素晴らしいのは、“日本人の心性”と言うべきものへのアプローチである。超常現象に関わるエピソードが目白押し、しかも霊能者という、まさに日常と完全にかけ離れた部分を掘り下げることによって、日本人が古来より持っていた心性の拠り所が明らかになっていくという、本当に驚くべき構成となっている。歴史的検証によって、日本人の心性は明治維新と第二次大戦敗戦の2つの契機によって大きく様変わりしていったことは事実である。その影響は既存の宗教ですら免れ得なかった。だが、公から弾圧を受けたり、世間から白眼視されている心霊関係の中にこそ、その本来の心性とも言うべきものを見出したことは、この本の最も有意義な部分であると言えるだろう。この“非日常の中に日常の本質がある”という二律背反的真理こそが、途切れることのない心霊に対する需要の本質であると感じるところである。
本当に神や霊がいるかどうかが、インタビューによって明瞭に証明されたとは思わない(各人の話を総合すれば矛盾点が多数あり、却って胡散臭さを増している感さえある)。しかしながら、汎神論的世界観を有する日本人の心性が色濃く残されている世界の一つとして、霊能者の存在があるということは間違いないだろう。スピリチュアルな世界がなぜ現代日本において“癒し”の源となっているのか。また、いわゆる“カルト”とこれら霊能者とを区別している精神性がどこに存在するのか。この本を読めばその答えは簡単に見つかるだろう。この本に書かれた内容を全て否定することは愚かだと思うし、逆に全てを無条件に肯定することも正しい理解に立っていないと思う。第三者の肯定も否定も超えた部分で、これらの能力を持った人が存在すること自体を受け入れることが重要なのかもしれない。それが“現実”なのだからである。