『D級 都姿伝説』

D級都姿伝説 (MG BOOKS)

D級都姿伝説 (MG BOOKS)

全部で30のエピソード、そのうち半分はUFO関連の内容で占められている。いわゆる“都市伝説”を意識しているようであるが、むしろオカルトライターである筆者が集めてきた雑多なエピソードをまとめるために出してきたカテゴリーという印象の方が強い。

全体的な印象であるが、カテゴリーとしてはあまり新奇さを感じることはないが、個々のエピソードについてはかなり興味のあるものも少なからずあった。特に面白いと思うのは、“都市伝説”よろしく噂を引っ張り出してきたというものではなく、筆者の取材によって日の目を見ることが出来るようになった作品である。噂ではなく、そこに何かがあるという緊迫感は、やはり得がたいものであるということである。心霊関係のエピソードはとりわけ興味深い内容になっていたと思う。

しかし最終章、全体の半分を占めるUFO関連のエピソードは、正直食傷気味という印象が強かった。各エピソードのタイトルがいかにも扇情的であり、それでいながら内容の大半はタイトルから少々ずれたポイントをなぞるように蘊蓄語りされ、結局核心の内容は最後に軽く触れるだけという構成が目立った。UFO関連だから個人的にも色眼鏡で見てしまうことが多いことは自覚しているが、さすがにここまで看板倒しの内容ではかなり困ったものであるとしか言いようがない。筆者としてはここが一番の見せ所であり、かなり力を入れているのかもしれないが(実際書きぶりを見ていると、熱が籠もっているという雰囲気が取れるのは確かである)、センセーショナルな部分を強調しすぎて内容が空回りしている印象の方が先に出てくる。悪い意味で、煽りがきついということである。

こういうオカルト系のエピソードを印刷物の中で熱っぽく語ると、どうしても狂信的なイメージが強くなり、熱弁すればするほど却って胡散臭い雰囲気が漂う。まさにこの本は典型である。ネタ内容が斬新、着想が奇抜であるだけに、冷静な説得力が欲しいと思う。