『日本妖怪大百科』(全10巻)

DISCOVER妖怪 日本妖怪大百科 VOL.01 (Official File Magazine)

DISCOVER妖怪 日本妖怪大百科 VOL.01 (Official File Magazine)

ムック形式で出された、どちらかというと“入門書”レベルの本である。ただし次元の低いところへ流れるのではなく、入門書ではあるものの、豪華な執筆陣によるゴッタ煮でマニアもそれなりに楽しめるという印象が強い。

妖怪系の本から水木御大の影響力を消すというのは不可能に近いというのが現状であるが、このシリーズでは極力御大を前面に出さずに、その周辺(水木チルドレンあたり)や直接の接点が薄い人物の寄稿を中心に据えるという形で一線を画しているという印象が最初は強かった。だが回を追うごとに読者ページなどに鬼太郎のイラストや、また水木御大そのものの登場するページが増えたりと、ややそのあたりに最初の意気込みと違う部分を感じた。どうしても妖怪=御大というイメージが定着しており、やはり商売を考えるとやむを得ないのかもしれない。ただ京極氏が登場していないこともあって、いつもとは違う雰囲気になったことは確かである。

ただ1回ごとのページ数が30強の中で、データからビジュアル果てはコラムまでを詰め込んでいるために、全方位に向けての多様さは維持できているものの、どうしても中途半端な印象を免れることはできなかった。それは今日的な“妖怪”のコンセプトが多様を極めているという事情によることは明らかであるが、逆から言えば納得はできるが満足はできないという感想を持つ者も少なくないだろう。しかしながらこのページ数でやれることはほぼやり尽くした感は強い。

基本的には、妖怪に興味があるが本格的にどこから手をつければいいかと思っているレベルのファンに一番読んで欲しいところである。逆に、特定の妖怪キャラやコンセプトを追求するために読むというと、少々食い足りないのではないだろうか。分冊形式でそれぞれの妖怪キャラを扱ってはいるものの、専門書の域までは来ていないために、ニーズによっては目新しさに欠ける内容と受け取られても致し方ない部分があると思う。