雑誌三題

この年末に創刊の二誌と、もう一冊の特集号について感想などを書いてみる。

不思議大陸アトランティア 浮上編 (Town Mook)

不思議大陸アトランティア 浮上編 (Town Mook)

相次いで創刊された二誌であるが、名前の通り、ジャンルは同じではあるもののその方向性は二極と言うべきであろう。ただどちらもその編集の意図するところが明確なだけに、妙な棲み分けもきちんと出来ているといった感じである。

『ムーマックス』の方は老舗の月刊『ムー』の流れを汲む、まさにオーソドックスな作りとなっている。特集記事を前面に出して畳みかけるように展開させる手法は、手堅さと説得力に長けたものであると思うし、長年オカルト雑誌をやってきたノウハウが詰まった王道と言うべき内容であると思う。変な言い方をすれば、安心してみられる面白さと言うべきだろうか。いかにも科学的根拠があるように見せるテクニックは、さすがというところだろう。またカラー写真の部分も、並木伸一郎氏のルートから入手の海外最新情報と、今まで扱ってきた膨大な資料が物を言っている。ただし手堅さの裏返しは、陳腐さに繋がる。今年得られた最新情報以外は、どこかで語られ尽くされた諸説を焼き直して作られた“定説”のオンパレードであり、オカルトに関する基礎知識をマスターするためには適当な内容であるが、この手の本を読みまくっている人間からすれば“目新しさ”という点ではやはりインパクトが弱いと言わざるを得ないと思う。

対する『アトランティア』は編集の中心である山口敏太郎氏のカラーが色濃く出ており、いわゆるセンセーショナリズムで勝負しているという感が強い。少々胡散臭いトピックにも次々と手を出し、とにかく読んでいて刺激的という印象である。特に目を惹くのが執筆陣である。オカルト雑誌なのに大槻教授やと学会の原田実氏などに記事を書かせたのはある意味センセーショナルの極みであると思うし、とにかく単体で本が書ける面子をずらりと揃えたのは壮観である。ただし「オールスターが最強のチームではない」という格言通り、各人が各人の得意分野で好きなように書いているという感が強く、一つのまとまったものにまで昇華し切れていないという恨みは残る。どうしても見開き2ページの寄稿では、個性も発揮しきれないというところだろう。ただオーソドックスでない分、何か面白い展開があるのではないかと睨んでいるところである。

と新刊2冊を紹介したわけだが、個人的に一番興味をそそられたのは『週刊大衆 ミステリー増刊 奇談』である。何が面白いと言っても、誌面構成がまさに週刊誌そのもの。あまり話題にはなっていないが、適当にセンセーショナルで適当にオーソドックスという、何ともしっくりとくる感じがたまらなく良いのである。マニアなら3冊とも買って読み耽るのがベストだろう。それぞれの個性を活かして、長く続いて欲しいと願うばかりである。