【−3】定員オーバー

具体的な場所が書かれてあるのだが、如何せん、怪異のきっかけとなる物証がアメリカンスクールの大破したバスというところで引っ掛かってしまった。
特異な事件や事故が怪異と密接に関係しているという話は非常に興味深いものを感じる一方で、その信憑性に関する情報がすぐに分かってしまうために、迂闊に書いて墓穴を掘るということも往々にしてある。
この作品に登場するアメリカンスクールのバスによる事故も、非常に特殊なケースであり、果たしてそれが事実としてあったかどうかが問題のポイントになってくる。
実際のところ外国人児童が複数死亡した事故は記憶にもないし、情報として流布するものもなく、最終的にこの特異な事例を裏付けるものはなかった。
そうなってくると俄然信憑性に問題が生じる。
具体性があればあるほどその事件・事故が実際に起こったかどうかの確証が必要になると思うし、それに類するものがなければ即ち“ガセネタ=作り話”という印象ばかりが残ってしまう。
事故内容のインパクトが強いほど、よくあることでは済まされず、やはり記録として“あったること”が示されないと立ちゆかないことになるだろう。
怪異そのものは、少々に他都市伝説が存在することは確かであるが(これが上に挙げた問題と絡んで信憑性を大きく損なう原因となっているのだが)、それなりに希少性のある内容になっているだけに残念に思う。
書き手としては大破したバスを物証として怪異を際立たせたい意向があったことは間違いないところであるが、その物証そのものがあまりにも特殊すぎたために、逆にその事故事実を立証させる必要性に迫られ、結局はそれが出せなかったために説得力を失ったと言える。
仮にバスを登場させなくとも怪異のみで十分怪談として成立しているので、その部分を提示させなかった方が正解だったと思う。