【−6】大塚→幕張本郷→天国

一読した感想は「冷静に狂っている」というものであった。
もっと簡単に言うと、わざとこういう書き方にしているなという印象である。
文章そのものは破綻しきっているのであるが、破綻のわりには“重複”や“欠落”はきわめて少ない。
要するに言葉を選んで客観的に書いているのである。
過去の大会においても破綻しきった文章はいくつかあったが、その原因の多くは“同じことをしつこく書く”かあるいは“自分にとって自明の理を書き抜く”という主観に偏りすぎた展開にあった。
ところがこの作品の文章において、そのようなことはほとんど見受けられない。
むしろ破綻のパターンは“突拍子もないトピックの出現”であることが大半、そして文法的・語法的錯乱は後半に集中している。
実話怪談に対する挑戦かあるいは挑発かは判らないが、書き手が故意に文章を崩したことはおそらく間違いのないところであると推測する。
しかしながら、実話怪談は記録の伝達を主とする文学であり、第三者に状況が伝わらない内容では成立し得ないのである。
書き手が意図するところは何となく解るのであるが、ただしそれが怪異を伝えるところにあるのではないのは明白であるだろう。
結論として、怪異の記録が明瞭に読者に伝わらない、怪異を表現するところに書き手の目的がない(周辺に起こった怪異を表現することで思いを伝えたいという意志が見えない、あるいは完全に失敗している)という2点において、この作品を最低評価させていただく。