【−1】笑顔

笑顔の心霊写真というものは実はそれほど珍しいものではないし、特に生霊の写真の場合はそれこそ生身の人間のように写っている場合もあるから、笑顔であったからといって驚くに値しないだろう。
それよりも、この写真が本物であったならば、最も驚くべき部分は、生身の人間と違和感なくツーショットで写っているポージングそのものである。
生霊であろうとも霊体であることには変わりないわけであり、全くあらぬ場所に写っていたり、大きさそのものが構図上おかしいなど、一応生身の人間らしい姿はしているものの、普通の心霊写真と同じように明確に“異様な状態”であると認識できるような形で写真に収まっているのが大概のケースである。
生霊であると全く気付かないぐらい自然な形で友人と写り込んでいるということは、おそらく友人と同じ制服姿で、同じようなVサインをした等身大の生霊がいると推測できる。
しかしその写真に写されている生霊の姿に関する情報がかなり少なく、読者が本当に心霊写真であると判断できるレベルにはなっていないというのが正直な感想である。
本物が添付されていなければ駄目と言う気はないが、心霊写真を怪異のメインに据える場合、単なるイメージではなく、ディテールにこだわった言葉を積み重ねる必要があると言える。
この作品の場合、その部分に問題があるため、マイナス評価とさせていただいた。