【−6】あの日のまま

超常的怪異がないだけではなく、実際には何らかの事態が生じたという確証すらない話である。
友人が“呪いを掛けられる”と豪語しているが、体験者自身には何らかの異変もないわけであり、また後日談でいかにも“呪い返し”が行われたようなことが示唆されているが、完全な憶測だけの内容である。
というよりも、本当に友人が呪いを掛けたという事実の確認もなく、また後日会った時に友人の身長が止まった状態である事実を“呪い返し”であるとみなすのにも無理がある(むしろ“身体障害=呪い”とする短絡的な憶測がなされており、ある意味非常に不愉快な認識であると感じる)。
結局この作品で書かれていることは、体験者が変な友人に誘われて、人間の暗黒面を見せつけられてしまったという思い出話に過ぎず、そこに怪異(いわゆる『東京伝説』的な怪異も含めて)のかけらも見出すことは出来ないと言えよう。
これではせっかく友人のキャラクターを徹底的に書き込んで造型していても、何の意味もない。
全く子供らしい発想ではないところが薄気味悪いところであり、人によっては広義の怪談として認めるケースもあるかもしれないが、呪術による何らかの事態が一切発生していない点を考慮すると、親子で仕組んだただの嫌がらせレベルを脱することは不可能であり、決して“怪”と名乗れる内容ではないと言える。
よって評点としては、最低点とさせていただいた。