【0】洗髪

風呂場の怪異、特に洗髪中に現れるあやかしについてはかなりの類話が存在する。
この作品にあるような、一緒になって洗髪してくれるあやかしの話は昨年の【超−1】でも出されており、どうしても希少性の面での評価は低くせざるを得ないところである。
ただし“湯をぶっかけてあやかしを消し飛ばす”という対処法は初見であり、それなりのオリジナリティーはあるという意見である。
また恐怖譚とせず、何となく剛胆な体験者という印象を押しだして、ちょっとしたおかしみを生み出そうとする試みもそれなりの趣向であると解釈したい。
それでもやはり、直近の作品との類似性を乗り越えるだけのインパクトは作り出せなかったと思うし、どちらかというとその類似性の方が一番最初に目立ってしまった感がある。
指がどんどん増えるというところがこの作品の一番の肝であると思うので、そのあたりの描写をしっかりと確立させておけば、以前の類話との相違部分が強調されて希少な内容になれたと推測する。
個人的には、些細ではあるが明確な違いも存在するということで、可もなく不可もなくというところで評点させていただいた。