【０】お盆になると

超−１

お盆になると地獄の釜の蓋が開いて亡者が現世に戻ってくるというから、やはりこういう怪異が起こるのも当然なのかもしれないと思いつつ読んだ。
怪異の内容としては意外と興味深いという印象であるし、特に刀の怪異は希少なものであると言えるだろう。
ところが、その怪異の内容が単なる紹介文のレベルで書かれているために、読みやすい反面、全く平板な印象しか出てこないのである。
極端にいえば、体験者自身がこの怪異に対して恐怖を抱いているのかどうなのかすら、読者に伝わってこないのである。
そういう臨場感のない書き方であるために、内容の凄まじさと比べて何となく希薄な感覚で読み終えてしまったという感想しか持てない。
“あったること”がきちんと書かれているからマイナス評価にはしないが、ただしプラス評価になるほどしっかりとした“怪談”作品にもなり切れていないわけである。
ネタの素材としては面白いものであるので、体験者の感情を交え、さらに怪異の内容やあやかしの描写を細かく記述することが出来ていれば、なかなかの作品に仕上がっていたと思う。