【−2】ばつが悪い?

やはり“記録”としての実話怪談という観点から見ると、相当手抜きという印象である。
“病院の待合室”という設定であるが、病院の規模によっても大きさが明らかに違うし、それによって場所の雰囲気が全く変わってしまうと言える。
さらに時間帯によっても人の出入りの数も違うし、そういう場面設定が明確でないために“記録”としても曖昧としか言いようがないし、“怪談”作品としてのアトモス作りにも失敗している。
そして何よりも杜撰だと思うのは、最後の霊体の描写である。
“テレビ画面の中の人影は、気づかれたとわかったのか、ばつが悪そうにどこかへ立ち去って行った”という一文であるが、これはまさに主観による描写であり、どうやって本当に“気付かれたとわかった”のか、あるいは“ばつの悪そうに”の時の表情はどうだったとか、それを読み手に納得させるだけの言葉が足りないのである。
要するに、文章レベルで客観的に状況を表現して読み手に提示する作業を、最も肝心な部分で怠っていると言われても致し方ない次元なのである。
自分の見たまま感じたままを書くことに対して反対ではないが、それを読んでいる第三者を意識していかに根拠付けて書くことができるかが、実力の差であるという見解である。
怪異としても平凡極まりなく、また特に希少と見るべき内容も皆無ということで、文章のいい加減さと相まってかなりのマイナス評価とさせていただいた。


★ここからは独り言★
文章スタイルなどから察するに、以前よりかなりの数を投稿されてきている書き手であると推測するが、直言すれば、以前の作品と比べてはるかに質が落ちていると言わざるを得ない。怪異の内容もどんどん凡百のレベルになってきているし、文章の練り方も雑そのもの。文体の再考を促す講評も無視するかのように独自路線を貫いているようにも見えるが、周囲からは“意固地になって粗製濫造を繰り返している”程度にしか思われていないのも事実であろう(一連の文章スタイルが同一の書き手のものであればの仮定だが)。本来この講評の場は単一作品のみを扱うのが決まりなのだが、敢えて“同じ文章スタイルを持っている作品群が目立って良い評価を挙げられていない”ということで、独り言をさせていただいた。