日本魔界伝説地図

日本魔界伝説地図 (Gakken Mook)

日本魔界伝説地図 (Gakken Mook)

「あやかしの世界にドップリと身を沈めた者は、最後にはその土地に足を運びたい衝動に駆られる」というのが持論である。本当にそこであやかしに出くわしたいという気持ち半分、何か痕跡があればそれで良しとする気持ち半分。探求心という名の、真面目と遊びの両方の気分を満たしてくれる心根を持って現地へ訪れようとする。そんな気持ちに襲われかけている人ならば、この本は非常に心強い相棒になってくれるだろう。
日本を6つのエリアに区分して、満遍なく有名どころの伝承地を紹介してくれている。どうしてもこの手の本の場合、関東(というよりも東京)にウエイトが置かれすぎていて不公平感を覚えることがしばしばなのだが、この本ではそういうことはあまり感じなかった。そして何よりガイドの内容がコンパクトで、しかも資料としても良くできていると言えるだろう。もちろん探訪するための必携ガイドと銘打っているが、そのための下準備と称して読むだけでも結構面白い。
紹介されている記事項目は80弱ほどであるが、その各項目に複数の情報を詰め込んでいるので、実際に名前が登場する伝承地は100を超えている。さらに“ご当地作家”が蘊蓄を語るコーナーでも、かなりの伝承地名が飛び交っているので、そこそこの情報量は確保できている。ただし数から言えば、これでもほんのさわり程度というのが個人的意見である(だから“初心者向け”というニュアンスで推奨しているのだが)。よく頑張っているとは思うが、どうしてもページ数の関係上やむを得ないところである。 
全体としては「手堅い」という印象、初心者にとってはまさにめくるめくワンダーな雰囲気を出してくれていると言えるだろう。万人受けを狙うとすれば、こういう作りがベストだと思うし、それなりに興味を持たせることには成功している。ただし上級者には少し食い足りない感は否めないところであるだろう。