『恐怖箱 怪想』

恐怖箱 怪想 (恐怖文庫)

恐怖箱 怪想 (恐怖文庫)

久しぶりに“厭系”怪談のオンパレードといった感じの作品である。お題に合わせて持ち寄った怪異譚がどれもいい具合に“厭系”と言うべきか、とにかく闇鍋大会の具材がほとんど食えそうにないものばかりだったという、非常に暗澹たる結末となった感がある。ただし気分を悪くさせた点では、実話怪談のエグ味を十分堪能できたのであるから、良しとすべきなのかもしれない。
特に後半あたりからの不愉快感を伴う怪異の連続は、最近では特筆ものであると感じるところが強く、ページの多い作品ほどその傾向が増してくる。またその“厭”ぶりが、生理的なものに直結するものから、いわゆる“罰当たり”な人間性の歪みからくるものまでバラエティーに富んでいる。中には心霊的要素の追求よりも気色の悪い体験そのものによる不快感を増長させるだけさせたような作品まであるから、良い意味で堪能させてもらえたように思う。その手の内容に弱い人は、ある程度は覚悟して読まなければならないだろう。
全体的にはヘビーな内容が詰まっていて、負のパワーが強烈という印象の作品である。精神的にマイナス加減の時に読まない方がいいと思うし、どちらかと言うと万人向けではなく、かなり人を選ぶタイプの内容であると思う。ただ人の持っている暗部というか、どす黒いものを求めている読み手には、久しぶりの“当たり”であると言える。