2011-04-17から1日間の記事一覧

『やめてよ』

怪異は非常に些細なものである。ノブを捻らないと開かないドアが開いて閉まったという内容であるが、既にこの段階で水準を下回る内容と言わざるを得ない。この程度の怪異だけの紹介であれば、それが純然たる超常現象であると認められたとしても、弱いという…

『ダムの監視』

怪異のネタとしてはかなり怖い部類のものであると思う。女の子(“女”と混同しているがイメージは天と地ほどの差があることは言うまでもない)がダムの壁に張りついているのがいつも見えており、その霊がある時、作業員をダム湖に引きずり込むというとんでも…

『便所』

中国で起こった怪異であるが、戦後間もない頃であれば、便所は共同で家屋の外にあったというケースで起こった怪異もあるので、特殊な風習が引っ掛かってくるという印象もなかった。かなり昔の日本で起こった怪異であると言われても通用するのではないかと思…

『まよいが』

怪異を要約してしまうと、狐狸の類に化かされたという話になってしまう。しかしこの作品は、ディテールにその価値があると言っても過言ではない。 まず化かされている最中のディテールであるが、相手の男が鉄砲を非常に恐れているというくだりである。外へ追…

『戻らないと』

非常にリアルな臨死体験の証言である。状況から考えると、まだ完全に“あの世”にも移動していない、まだ病室で魂が体外へ抜け出た瞬間の段階である。しかしその場面を簡潔な言葉で綴っており、見たままがきちんと書かれていて、的確な内容であると言えるだろ…

『僕のクワガタ』

はっきり言うが、こういうタイプの話はまさしく【講評者殺し】。あさっての方角から来たような突拍子もないような怪異も色々あるが、ここまでとんでもなく理解不能に陥りそうな話も、そう滅多とない。書かれてある内容は現実離れもいいところなのであるが、…

『人香』

人の持つ超能力的なものにまつわる話は、それ自体は怪異でも何でもなく、いわゆる“奇譚”と呼ばれるジャンルに集約されるという意見である。この作品に出てくる“人の焼かれるニオイで性別などを当てる”能力そのものに超常現象的な印象はほとんどない。むしろ…

貌浪

お盆に漁をすることは古来よりの禁忌。亡者が戻ってきており、仲間にされてしまうという伝承が全国的に残されている。この作品は、この伝承が真実であることを裏付けていると言うしかない内容である。それ故に、かなり希少な内容である。 怪異そのものである…

『踏切』

“異界”ネタの中でも、かなり毛色の違う印象を持つ内容である。やはり“西日の差す荒野”のイメージの圧倒的な存在感は相当なものであり、この存在を見事に描写しきったところに、この作品の成功はあると言ってもおかしくないだろう。それほどまでに、踏切を越…

『セントラルロード怪談』

目撃場所が具体的に書かれているので非常に興味を持って読んだが、しかし、妖怪目撃談としては最低レベルの内容と言うしかなかった。 最初に“一反木綿”という既存の妖怪キャラクター名を出しておきながら、その後の証言内容が二転三転、最終的にはあの“一反…