【+4】黒玉

昔語りというような懐かしい雰囲気を出しながら、結構奇怪な話に仕上がっている。
文章は方言を使った語りの部分を増やすことで雰囲気を作り、きびきびとした描写によって状況を活写していると言うべきだろう。
全体として締まりがあり、またスピーディーな展開を生み出していると思う。
怪異については、まさに“状態明瞭意味不明”の感が強い。
文章によって明確に怪異の視覚的イメージが出来ているにもかかわらず、その存在の理由や目的、果ては婆さんとの関係まで一切触れられていない。
このイメージのギャップが、この作品の怪異をより鮮明なものにしていると思う。
目に見えるはずのないものが、いきなり目の前にあたかも普通の生物のように動いているのが見えるという怪異は、やはり確かな描写力があってこそ成立する内容である。
もし仮に風呂場にあったあやかしに関する描写が曖昧だったならば、多分ここまで印象のある作品にはなっていなかっただろう。
ネタの希少性と共に、作者の筆力がものを言った作品である。