【−2】悔恨

表記・ネタ共に中途半端さが残る作品だと思う。
まず、この話は恐怖感を煽るものなのか、感慨を伴わせるものなのか、作者の方向性が見られない。
そのあたりの表記がものすごく中途半端に感じる。
「今まで経験したことのない恐怖」と強調しながら、その恐怖感や周辺状況がほとんど書かれていない。
銀縁眼鏡男の感情の琴線に触れたとしながらも、最後で苦笑しながら迷惑扱いする。
人間だからいつまでも同じ感情のままでいられないことは事実である。
しかしこれだけの短いストーリーの中で目まぐるしく感情が変化すると、さすがに落ち着きのなさの方が目立ってしまう。
変化するプロセスを書くか、思い切って1つの感情に特化するか、どちらかにしないと統一感を失うだろう。
ネタについても、一番肝になるはずの部分が非常に弱い印象を受ける。
夢の中で怪異にあったとするくだりであるが、その直前に怪異に遭っている訳だから(とはいうものの、実際には気配だけ)、それに関連する夢を見ることはありうる。
しかも自分が銀縁眼鏡男であると夢の中で意識している部分も“気配”だけである。
夢の中に現れた女性の言葉も、もしかすると雑誌や何かで読んだ記憶が再現されただけの可能性も捨てきれない。
また夢から覚めた後に涙が伝っていた部分も、当然夢の中で悲しい思いをしているのだから、生理的に反応しただけのことで、怪異の物証にはほど遠いものである(銀縁眼鏡男に感応した証拠というのであれば、上記の表記の問題に繋がっていくだけだ)。
結局、気配と夢だけで怪異が形成されているので、いくら2つの関連性を強調しても、思い込みの部分が強いという印象を否定できない。