【+1】駅の人混みで

死後に現れた行動を通して、亡くなった人の人柄を偲ぶというコンセプトで書かれたものだろう。
仕事仲間の目撃証言を克明に表記し、恐怖感よりも感慨の方を優先させる書きぶりである。
さらに最後の数行でそれらの思いを強くさせようという作者の意図が見えてくる。
この意図はある程度成功しているようであるし、感傷的な雰囲気というものが作品全体を支配しているように感じる。
だが、怪異の内容があまりにも凡庸である。
亡くなった人が日常変わらぬ様子で現れたりする話はそれこそ掃いて捨てるほどあるし、その話が何となくしんみりとさせる内容である場合も多い。
結局あまりにも前例が多すぎるために、いくら文章技術によって叙情溢れる雰囲気を作ったとしても、“その他大勢”の中に埋没してしまうことになる。
やはりネタあってこその“実話怪談”であるので、評価はかなり抑えめになるだろう。
ちなみ+1の加点は、文章能力によるものである(決してネタではないということである)。