【−1】小さい話

体験者の様子を見た人物から怪異を聞いたという形のため、怪異に対する衝撃の度合いが極端に低くなってしまった。
しかも話者自身の感想が「変に感心した」程度なのだから、本当にインパクトのある怪談話にしたかったのかすら疑問である。
こういう掌編で“投げっぱなし”に仕立てるのは、恐怖・不思議の感覚を問わず、強烈なインパクトを与えるのが最大の目的であると言ってもおかしくない。
それを敢えて間接的な表現にした作者の意図は、この作品の中からは明快に読みとれない。
白昼夢のような薄ぼんやりとした情景を作ろうとしたのだろうか。
もしそうであるならば、体験者である彼女の怖がりようが浮いてしまうだろうし、もし本当に怖がらせるのであれば、赤ちゃんの足に関する描写がもっと必要だったと思う。
全体的な印象としては、恐怖譚にするか不思議譚にするかの選択が中途半端になってしまっているという感じである。
個人的には正攻法で、インパクト重視の方が上手くいったような気がする。