【+3】岡持ち

不条理という以上にシュールなシチュエーションの怪異である。
こういう手のネタの場合、作者はどうしても“笑い”の方に走ってしまい勝ちなのであるが、この作品では“あったること”の表現に専念することでひと味違ったインパクトを与えている。
笑うに笑えない体験者の心理を読者にも体験させようという意図があるように感じる。
体験者の話し口調を見ると非常にノリが軽い印象を受けるが、決してギャグを飛ばしているのではなく、むしろ目の前に起こっている怪異を必死に否定しようとしているがための軽さに見える。
怪異に対するリアクションの一つとして非常にリアルなものを感じさせるし、却って切迫感というものが滲み出ているようにも見える。
まさに“洒落にならない”怖さである。
怪異であるが、“岡持ち”という物証がある以上、かなり貴重なネタであると思う。
この物証のその後も知りたいところであるが、怪異の肝がシュールな男であると思うので、ダラダラと後日談を書くよりも思いきって削った方が正解だったようにも感じる。
ただ岡持ちの存在だけでもう一話作品ができてしまうほどとんでもない物証なので、できればその後は別の話で読んでみたいところである。
全般的にはなかなか得難い作品であると思う。