【0】だるまさんが転んだ

一番気になったのは、最後の文体の変化である。
子供時代の体験を客観的な文体で書いていたのが急に子供本人が大人に向けて必死で語りかけるような調子に変わった訳だが、どうも違和感が残る。
しかしこれを今までの書きぶりで表現しても、やはり違和感が出てくると思った。
むしろ子供の語り口調で全体をまとめる方が自然なように感じた。
なぜなら、この怪異自体が非常に『学校の怪談』テイストであると見たためである。
子供のグループがスポットに肝試しに行って奇怪な現象に見舞われるというシチュエーションからして、まさにジュブナイルの世界の真骨頂であると言える。
しかも最後に語られる“包丁を持ったお婆さん”の霊なども、この世界ならではの感覚のものである。
そういうことで、子供向け怪談話に近い雰囲気であると感じてしまったために、どうしても恐怖感は起こってこなかった。
下手をすると眉唾物という印象の方が強い。
全ての原因は最後に語られる怪異の真相である。
はっきり言えば、あまりにもリアリティに欠ける様相であり、それが子供時代の体験と重なってしまったために、不自然さを感じてしまったと言えるだろう。
ただし積極的なマイナス評価までは至らず。