【+1】歯無し

第一印象としては「怪異と関係のない情報が多すぎ」である。
怪異の肝だけを取り上げれば最後の一段落だけで十分であると思うし、それ以外の部分はほとんど怪異と直結しない内容であると感じた。
逆に前半部分はあまりにも思わせぶりな情報が多すぎて、却って不要な想像が膨らんでしまった感が強い。
特に書くのに慣れていない者が書き始めに呻吟して、なかなか本題に入ることができずに、ダラダラと周辺事情を垂れ流す傾向がある。
ある程度書いてくると筆がスムーズに動いてきれいにまとまるのだが、書き終えてからきちんとした推敲をしないとかなり頭でっかちの文章になってしまい、冒頭部分でのもたつき感が作品全体の勢いを殺してしまうケースがある。
この作品もその悪い部分が如実に出てしまっているパターンであることは間違いない。
実話怪談の場合は怪異の描写に努めればそれなりの作品に仕上がることが多いのだが、書き始めについてはなかなか思うようにいかないことが多い。
怪異と直接関係のない情報を削り取れるだけ削るという推敲を心掛けた方が良いのではないだろうか。
(最初から書きたいことだけを精選して書くという技法は並大抵の修練では獲得できないと思う。まず書きたいことだけ書き尽くして、そこから不必要だと思うことを削り落とす推敲方法が一番現実的であり、無難なやり方であるだろう。時間制限有りで一発勝負の小論文作成ではないのだから、そのあたりは納得のいくまで推敲すべきである)