【+1】カーナビ

最近やたらと怪異以外の部分に力の入っている作品が並んでいたが、久々の“投げっぱなし”怪談である。
しかもきちんとオチまで付けていてくれる、親切な怪談話である。
何となく“小咄”という印象を持った。
怪異自体もカーナビの物真似をして生者を死へ導こうとしており、何となく涙ぐましい努力という印象である。
まさに時代と共に死霊(もしかすると狐狸)も変化しているのだと思ってしまった。
ただし怪異のパターンとしては王道パターン。
昔は同乗者(多くは恋人)に憑依して危険な場所へ誘い込むという話でしきりに登場してきた、古典的な話である。
それ故に“幻のカーナビ”という形で新奇さを狙っても、どうしても希少性の点で見劣りしていると感じてしまった。
作品としては際立った部分はないが、怪異の内容に見合った書きぶりであると思う。