【+3】挨拶

内容としては怪談というよりも奇談に近いものであるだろう。
実際に起こりうる出来事としてその地域に言い習わされている以上、怪異であると認識するのはおかしいと言える。
だが、奇談として読むと、これはなかなか面白い話である。
死者が血を噴き出す現象を指して“死者が会いたい人が来て喜んでいる”というのは聞いたことがなく、葬礼に関する民俗学的見地からも貴重な話ではないかと思う。
それよりも、この作品の場合、その怪現象を“読ませる話”として見事に仕立て上げているという印象が強い。
最初に故人と体験者との心のつながりを感傷的に書き出し、しんみりとした雰囲気を醸し出す。
そしていきなり怪現象が起こると、ドタバタのとんでもない修羅場に変わる。
まさにギャグ漫画のごとき、天から地へ一気に落とし込むような、鮮やかなどんでん返しぶりである。
ここまで見事に切り返しがあると、思わず唸ってしまう。
またドタバタの時の体験者と周囲の大人とのやりとりも思わず笑ってしまいそうになるほど珍妙で、且つ臨場感溢れる部分である。
下手をするとただの習俗の紹介だけで終わってしまいそうな内容を、作者の構成力で活き活きとした“話”にさせた点は評したいと思う。