No.9

3月と4月に限定的に応募、作品数も13で多作というレベルではない。
だが、一つ一つの作品は非常に整えられたという印象が強い。
ある意味“玄人好み”であり、どうすれば読者が怪異のポイントに行き着けるかを明確に把握して書いているように感じる。
言うならば、展開が巧いのである。
『ぱさりぱさり』でも『黒い蛇』でも個人的には厳しい評価を入れたが、ストーリーの展開については一定の評価をしている(これらの作品は整合性に関する問題点を感じたための減点であった)。
また体験者の“気付き”という場面での効果は抜群であると言っていいだろう。
最高得点の『息』は言うまでもなく、『ぱさりぱさり』の鏡、『赤い猿』や『友の忠告』の子供の証言、『地下道にて』のライターの火などバリエーションも豊富で、かなりの巧者ぶりを見せてもらえたと思う。
しかし展開を重視するあまり強引になりすぎた部分も指摘できる。
『煙』『黒い蛇』『言いたかったこと』あたりは微妙な判断ではあるが、読者によっては納得いかないと思う部分もあるだろう(それが如実に出たのが『黒い蛇』である)。
整合性の部分でもう少し配慮がなされていれば、もっと多くの読者の支持を得られたのではないかと思う次第である。