【+1】真夜中の風呂

怪異現象に対して主観的な解釈を施すことは、あまり好ましくないこととされている。
しかしこの作品では、この主観的解釈があるからこそ、単なる目撃談から一歩抜きんでた内容になっているように感じる。
怪異の肝は風呂場に現れた祖母の霊であるが、その祖母の霊が“目を閉じて”通り過ぎるという事実に対して“孫の裸を見たくない”という解釈を施したために、怪異が際立って面白いものになった。
実際にはそういう恥ずかしいところを霊が見たくなければ風呂場に現れるはずがなく、冷静に考えれば、死に顔に近い表情で現れたのだと解釈すべきなのであろう。
それを体験者の主観によって変換させることによって、肉親同士の暖かみのある怪談話となり、良い印象を与えることに成功している。
またその解釈に嫌みがなく、読者も自然な流れの中で当然のように受け取ることが出来ている。
本来なら可もなく不可もない目撃談なのだが、怪談として上手くまとめられていると思うので、1点プラスとさせていただいた。