【+1】賜る力

40歳を過ぎてから得た霊能力といい、その力を得たエピソードの不可思議さといい、非常に珍しい話である。
おそらく風呂場に現れた白蛇が神様であり、祖父はその霊能力が自分に授けられた目的を理解して、本業以外の仕事として難儀な相談に乗っていたものと考える。
そのような想像をしてしまうのは、結局、この作品で詳細が書かれているきっかけと同じぐらい、祖父の霊能力が気になってしまうからである。
“その力を恐れて”と書かれているからには相当な能力を発揮したのであろうと推測でき、その内容の一端を知りたいという気にさせられた。
それが却ってこの作品の場合、不利に作用したと思う。
勿論このエピソード自体も希少性が高いのであるが、もっと凄いものが隠されているのではないかという憶測がちらちらと脳裏をよぎるのである。
一作ごとに評されることを念頭に置いた場合、“これ以外にももっと凄いものがある”という文言を加えることは、書かれた内容に対する興味に水を差す危険性が非常に高い(最初から連作として上梓するのとは明らかに立場が違うわけだ)。
この作品も、その呪縛に絡め取られてしまった感が強い。
能力云々の記述は最後の部分でさらりと書く程度にとどめた方がよかったように思う。