【+4】肉球

怪異とそれに絡んでくる人物キャラの気持ち悪さが見事に混じり合って、強烈なインパクトを与えてくれる秀作である。
特に須賀氏のキャラクターが冒頭からよく作り込まれており、クライマックスの場面での壊れっぷりがあまりにも自然であったため、作品全体の雰囲気を大きく支配する効果として抜群の存在感であると言えるだろう。
このキャラだけでも十分恐怖感を味わえるのだが、登場した怪異も相当である。
落下してくる霊体は多いが、丸い肉の塊というのは珍しい。
しかもそれが“体育座りした裸の女”であるから、なおのこと不気味である(またこの霊の正体を明かすのが須賀氏であり、そこから狂ったように呟き続けるから堪らない。この場面は圧巻である)。
いったいこの霊はマンションに取り憑いたものか、それとも須賀氏に取り憑いていたものなのか、そのあたりが曖昧なまま提示されているところが、キャラと怪異の絶妙な絡み合いに繋がっていると思う。
こういうパターンの場合、キャラと怪異が独立して個性を放ってしまい、どっちもつかずの印象が強くなってしまう傾向がありがちなのだが、作者が両方を巧くコントロールしているよう見える。
文章については、若干技巧に走りすぎている感(例えば須賀氏の会話部分をわざと<>で括っているなど)もあるが、おおむね良好である。
怪異と怪人物、どちらも楽しめるおいしい作品であるだろう。